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新・親孝行のすすめ  「歩くために歩く」を支援する

2015.11.20 Fri

[老老介護]
老老介護がめずらしい話ではなくなってきました。高齢の妻が夫を介護するようなケースにとどまらず、その逆もあれば、高齢の子供が老親を介護するような場面も増えています。たとえば65歳の娘や息子が90歳の親を介護しているような場合のことです。65歳と言えば、高齢というにはまだ早いような気もしますが、制度上は介護保険証を交付される年齢であり、身体状況によっては介護認定を申請することもできる歳です。

[親孝行]
親の介護は親孝行のひとつだと私は思っていましたが、作家で医師の米山公啓さんは「親の介護は責任であり義務であっても、親孝行だとは言えない」と語っています。それよりも、親が介護を必要とするようにならないよう、介護予防に協力し、元気なまま長生きするように助けるのが親孝行だというのです。

70代、80代といった高齢期を、介護を受けて暮らすか、自分の脚で歩いて外に出かけたり好きなことをして暮らすかでは、精神的な充足感がまったく違います。ですから「親を元気で長生きさせることは最高の親孝行で」ありますし、また、それが実は「自分の幸せのためでもある」(米山公啓さん)のです。

これを社会的に見ると、要介護の人の増加は医療費や介護保険給付費といった社会保障費を増大させることになり、急速な高齢化のもとでは、社会保障制度そのものさえ大幅に後退させかねません。それに対して、足腰をはじめとする心身が健康で元気な高齢者が多数になれば、むしろ個人消費を増やして経済を活性化させることができるのです。

[自分のためにも]
誕生日や敬老の日にプレゼントをするのも親孝行ですが、高齢の親の介護予防に協力し、支援するという、高齢社会ならではの新しい親孝行を今後もっと広めたいものです。この場合、親孝行をする側は「子供」と言っても少なくとも中高年、あるいは高齢者であるわけです。整形外科医などロコモの専門家はロコモ予防や対策は40代から心がけよと言っています。つまり、新・親孝行が一方的でないのは、介護予防で親を助けることは、自分のためにもなるということです。

[情報にうとい高齢者]
高齢者の介護予防については、もちろん本人の自主的な意思が重要ですが、高齢者は新しい情報にうとく、経験にないことを取り入れることには保守的なので、子供などまわりの人が応援していくことも必要です。たとえば、味もよく食べやすい冷凍の弁当が最近はずいぶん出ていますし、また配食のサービスも増えてきていますが、高齢者はそういうものに気づいてなかったり、知っていても新しいものには手を出しにくいものです。

[生涯歩くために]
介護予防もいろんな側面がありますが、いちばん目標に掲げたいのは、生涯歩けるようにすることです。歩ける体を作るための訓練としてストレッチや筋トレが推奨されています。
また、最近普及が高まっているのが、ノルディックウォーキングとかポールウォーキングと呼ばれる2本のポールで歩く方法です。

[駆動原理と安定・バランス原理]
北欧から90年代終わり頃に日本に伝わってきたノルディックウォーキングは、ポール(ストック)で自分の体を押し出していくスポーツ感覚のウォーキングです。それに対してポールウォーキングという名称で日本の整形外科医が考案したウォーキングがあります。ポールウォーキングは2本のポールで前方を支えるように歩く方法です。ノルディックウォーキングが4本足(自分の脚と2本のポール)で地面を押す「駆動原理」だとすると、ポールウォーキングは、駆動の2本足に2本のポールによる“前足”が加わる「安定・バランス」原理です。実際、4本足の動物は、駆動力は後ろ足で地面を蹴るのが中心で、前足はバランスをとったり方向の選択を制御していると言います。

[歩くためには歩く]
歩行に不安を覚えたり、歩行に支障を感じている人が、もう一度まともに歩けるようになるためには歩くことがいちばんです。歩くためには歩く。これが法則です。その際、ポールウォーキングで歩けば、安定して転倒の恐れを感じないで、思いきり足を前に出したり、歩幅を広げたりできます。つまり2本のポールを持つことによって「歩くために歩く」が実現できるのです。私が代表を務めるNPO法人みんなの元気学校では毎月「杉並ポール歩きの会(杉ポ)」を開催して、2本のポールで歩く体験の場を提供していますが、最近目立つのが、外に出にくい高齢の親のために代わってポールウォーキングを覚えようとやってくる人です。これは、まさに新しい親孝行の実践例と言えるのではないでしょうか。

※参考サイト

ノルディックウォーキング・ネットワーク http://nordic-walking.jp/

NPO法人みんなの元気学校の活動紹介記事 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=119178

Yahoo!スポーツナビDo  ノルディックウォーキング

http://dosports.yahoo.co.jp/column/detail/201504060002-spnavido


この記事のコメント

  1. Takaaki Fujita より:

    親孝行のお手伝いをいたします。ポールを送られる方は、親と一緒に歩き同じ時間を屋外で共有することが最も親孝行と思います。親と一緒に歩けない方は、指導者90分2回使用できる券も付けて進呈してください。私が代役を務めます。きっと、私と同じ考えのボランティアインストラクターは沢山いるはずです。

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