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2021年はどんな年

2021.01.01 Fri

明けましておめでとうございます。2021年は60年サイクルの干支では「辛丑」(かのとうし)で、「痛み(辛)を伴う上げ相場(ブル)」とでも解釈しておきましょうか。新年を迎えるにあたり、いま日本と世界が抱える問題について、どうなるのか考えてみました。

 

コロナは収束するのか

新型コロナウイルスに翻弄された2020年でしたが、2021年はどうなるのでしょうか。新型コロナのようにパンデミックになった感染症が収束するのは、多くの人が感染するかワクチンを接種することで「集団免疫」を獲得した場合か、特効薬が見つかった場合のどちらかです。

 

新型コロナの特効薬が開発されたという情報はまだないのですが、ワクチンのほうは開発が進み、すでに欧米では一般の人々への接種が始まっています。接種が先行する先進国では、年の前半に接種が進み、夏ごろからその効果が現れ、早ければ秋ごろには収束する、という見方が多いようです。

 

そうあってほしいものですが、このワクチン・シナリオが崩れる場合もありえます。ひとつは、ワクチンの致死的な「副反応」が多く出て接種が中止あるいは停止になる場合、もうひとつは、ウイルスの変異によってワクチンの効果が薄れた場合です。これまでの欧米の接種で、死亡例は出ていないようですが、数日間は強いアレルギー反応が起きたり、強い頭痛に襲われたりといった症例が報告されています。

 

接種の初期の段階は、優先順位の高い医師など医療スタッフが多く、「こうした副反応は免疫ができるという主反応が起きているためだ」として、副反応が起きた人たちも積極的に接種を勧めています。しかし、一般の人々から後遺症が残るような重篤な例や死亡例が出てくると、接種をためらう人が多く出てきて、集団免疫を獲得することができず、感染症も収束しない、という状態になるかもしれません。ワクチンの失敗例は過去にいくつもあり、1976年に米国で発生した豚インフルエンザに対するワクチンは、開発を急ぐあまり十分な審査のプロセスを省いた結果、重篤な副反応が出て、取りやめになった事例が有名です。

 

ウイルスの変異に対しては、いまのところワクチンは有効だという見方が専門家から出ていますが、ワクチンの有効性の範囲を超えた変異が起こらないという保証はありません。昨年12月になって、英国と南アから感染力の強い変異種が発生しました。なぜ、英国で見つかったかというと、英国では新型コロナの遺伝子分析が多くなされているという背景があるようです。ほかの国でも、感染力や毒性の強い変異が発生していて、気づくのが遅れている可能性もあります。

 

日本でワクチンの接種が始まるのは2月以降だといわれています。今年後半の収束に期待をかけますが、今回のコロナで見えた感染症対策の不備を直しておかないと次の感染症の流行に対応できません。政府は、営業禁止などの強制措置が取れるようにコロナ特措法を改正するとしています。しかし、PCR検査体制の不備、医療体制の不備など医療全体の構造改革は急務です。(下のグラフはWHOによる新型コロナの感染者数と死者数)

 

東京五輪は開かれるのか

ワクチンの接種により、新型ウイルスによる感染症が収束に向かうと期待しますが、それでも東京オリンピック・パラリンピックが開催される7月末から9月初めにかけて、世界的な規模でコロナが収束しているとみるのは「希望的観測」だと思います。第3波が収まるどころか拡大している日本で、五輪開催を求める世論はいまや少数派です(NHKの世論調査では、開催すべきは27%で、中止は31%、延期は32%)。最終決断の春になったときに、これならできるという世論が多数派になるには、コロナがほぼ収束している状況になっている必要があると思いますが、これも難しいでしょう。

 

とはいえ、それでも五輪は強行されるというのが私の予測です。国際オリンピック委員会(IOC)の存在を支えているのは、その収入の7割強を占める五輪の放映権料です。その主力は米国のテレビですから、米国のコロナ状況がワクチン接種などで改善していれば、IOCとしては、無観客でもいいから開催してほしいというところでしょう。開催国である日本の組織委員会も、開催都市である東京都も、日本政府も気持ちは同じでしょうから、状況によっては、無観客もありうると思いますが、何としても開催すると思います。菅首相の思惑は、五輪の盛り上がりが秋風とともに冷めやらぬうちに解散・総選挙で勝つことでしょうから、世論の反対が相当強くならない限り、五輪開催の決意は変えることはないと思います。(下の写真は東京五輪の開催を確認するIOCのバッハ会長と菅首相=IOCのHPから)

 

 

菅政権は短命政権か

菅政権は発足したばかりですが、コロナのような危機に対して国民がそろって立ち向かうという時期のリーダーとしては不向きなようですね。国民に呼びかける言葉に力がないのです。

 

私は前首相の言葉を聞くと、いつも「巧言令色鮮(すくな)し仁」という論語の言葉を思い浮かべていました。「巧言」は言葉巧み、「令色」は愛想笑いのように表情をとりつくろうことで、そういう人にかぎって「仁」がない、という意味でしょう。菅さんを見ていると、ほとんどメモを読むだけですから「巧言」ではありません。表情は冷たい「冷色」に見えます。菅さんの学術会議の対応やステーキハウス会食をみると、とても「仁」があるとは思えません。「拙言冷色鮮し仁」では、支持率が上がりようもありませんね。

 

GoTo利用の正月旅行をキャンセルした私憤からの首相評ですが、世の中の評価はどうでしょうか。支持率の急落は、コロナ対応のまずさというのが直接の原因だと思いますが、菅さんが出すマイナスオーラを見ていると、これから人気が回復するという可能性は低く、それが今後の政局にも影響を及ぼしそうです。

 

自民党総裁としての菅総裁としての任期は2021年9月末までで、10月21日には衆議院の任期が来ます。総選挙で自民が大きく議席を減らさなければ、菅首相の続投でしょうが、議席を大きく減らせば、菅首相の退陣もありえます。解散はいつなのか、新年度予算を成立させたのちの3月解散説もありますが、コロナ感染拡大の現状をみれば、難しそうです。そうなると、オリ・パラ後の9月解散が有力となります。しかし、五輪が中止になったり、五輪があまり盛り上がらなかったりすれば、解散に踏み切れないかもしれません。

 

総選挙のないまま総裁選となれば、総裁選びは「選挙の顔」を選ぶ争いになりますから、菅内閣の支持率が低迷していれば、「菅首相では選挙に勝てない」という声が強まり、安倍首相の退陣を受けた2020年9月のように、菅氏の圧勝というわけにはいかないでしょう。

 

菅首相の首相としての行動を見ていると、優柔不断というか決断の遅い人のように見えます。その流れでいうと、解散の決断に踏み切れないまま総裁選になるような気がします。総裁選は、派閥のボス同士の裏取引の場でもありますから、総選挙よりも有利だと菅さんが踏むかもしれません。

 

国民の関心は、選挙はいつかというよりも、選挙後の首相は誰かということでしょう。私の予測は、菅政権は短命に終わるというものですが、これは「希望的観測」でしょうか。(下の写真はコロナ対策で記者会見する菅首相=官邸のHPから)

 

◎米国の復権はなるか

1月21日、バイデン氏は第46代の米国大統領に就任します。いまのところトランプ大統領は就任式に欠席となりそうで、前代未聞というか、米国の分裂を象徴する式典になりそうです。

 

バイデン政権がまず手掛けるのはコロナ対策です。米国ではワクチン接種がすでに始まっているので、国民全体への迅速かつ透明な接種と、接種が浸透するまでの検査体制と医療体制の整備拡充が重要です。失業者への給付金などのコロナ対策は年末に議会が可決、トランプ大統領もごねた末に承認しました。本格的なバイデン予算は2021年10月から始まる2021年度予算ということになります。

 

バイデン新大統領は、高額所得者への増税など社会的な格差税制策と再生可能エネルギーの拡大をめざすクリーン投資などを公約してきましたから、2021年度予算では、こうした政策が盛り込まれるでしょう。こうした政策がどの程度、実現するかは、議会の民主対共和の勢力図にかかっています。

 

昨年11月の大統領選と同時に行われた上下院選挙で、バイデン大統領の与党となる民主党は下院で多数党となったものの、上院は48対50となり、最後の2議席を争うジョージア州の決選投票にかかっています。投票は1月5日で、もともと共和党の議席ですから、民主党が2議席を取って上院を同数とするのは難しいように思えますが、大統領選に続き同州で民主党が勝利すれば、上院は民主と共和が同数となり、議決で同数の場合は、上院議長の副大統領が投票することになるので、同数なら与党民主党が多数党となります。

 

外交・安全保障では、国際協調路線へ復帰し、世界のリーダーとしての米国の復権をはかるというのがバイデン政権の狙いです。まず、トランプ政権で離脱した気候変動に関するパリ協定に復帰、その後、離脱を表明していた世界保健機関(WHO)などでの脱退手続きを中止するでしょう。欧州(NATO)や東アジア(日本・韓国)との安全保障関係も、トランプ以前に戻そうとするでしょうが、欧州では欧州連合(EU)からの英国の離脱、東アジアでは中国の強権国家ぶりがトランプ以前の「国際秩序」に戻す妨げになります。

 

なかでも、中国との関係をどうするのか、世界が最も注目しているところだと思います。トランプ以前の米国は、中国の人権問題には口をはさむが、貿易や投資の経済交流は積極的に進める政策をとってきました。しかし、トランプ政権は貿易や投資で制裁関税をかけたり、ファーウェイのような中国のハイテク企業を市場から締め出そうとしたり、中国との経済戦争を仕掛けました。後を引き継ぐバイデン政権はどうするのでしょうか。

 

地球温暖化対策など協力できる分野での対話を進める一方、中国の海洋進出や人権問題ではアジア諸国や欧州との連携をはかりながら圧力をかけて更なる悪化を食い止めつつ、もっともやっかいな通商問題では、経済制裁の解除を武器に譲歩を引き出す、といった複合的な戦略をとると思われます。この複雑な連立方程式を解くキーワードは低コストです。軍事的なリスクを高めたり、制裁関税で米国の消費者に負担をかけたりするような戦術はできるだけ避けるというのがバイデン流だと思います。

 

「覆水盆に返らず」といいますが、トランプ政権がひっくり返した米国主導の国際秩序のお盆をもとに戻すのはとても難しいでしょう。(下の写真はバイデン次期大統領の公式HPから)

 

株高はいつまで続くのか

2020年の東京証券取引所の大納会の終値は、年末の株価としてはバブルの最後を飾る1989年末以来の高値になりました。アベノミクスによる大胆な金融緩和のうえに、コロナ対策でさらに金融も財政も緩めたのだから、バブルが起きないはずはありません。日本だけなら、自国通貨の棄損策による円安の加速といった副作用が出そうですが、世界規模で同じようなコロナ対策が行われているので、副作用も目立たず、まさに世界同時バブルになっています。

 

バブルが永遠に続くことはないと、だれもがわかっていても、まだ大丈夫だとみんなが思っていればまだ大丈夫、という論理で高値をさぐっているのでしょう。相場が高値圏(割高)にあるのか安値圏(割安)にあるのかを測るのにPER(株価収益率)という指標があります。株価が1株当たりの純利益の何倍になっているか、という数字で、15倍というのが一つの目安になっています。年末の日経平均株価のPERは25倍、ニューヨークのダウのPERは30倍で、基準の倍近い高値になっているのがわかります。

 

日本のバブルがはじけて株価が大幅に下落したときに、こんな安値になれば、世界中の投資家が日本株を買うのではないかとPERを見たら、15倍程度だったので、これで世界標準なのかと思った記憶があります。日本の株価が最高値を付けた1989年末のPERは61倍でした。

 

問題は、世界の株バブルがいつはじけるかで、日本銀行などの中央銀行が金融緩和策の一環として株を買い支えている限りは、下がらないという見方もある一方、いつまでも買い続けることはできないので、「出口戦略」で、市中からマネーを回収しはじめたところで、下落するとの見方もあります。

 

トランプ政権は大統領選に向けて金融緩和を続けるように連邦準備制度理事会(FRB)に強い圧力をかけてきました。しかし、選挙も終わり、政権も代わりましたから、FRBもコロナが一段落すれば、「正常化」に向けて動き出すと思います。そうなれば、株価も「正常化」に向かうのではないでしょうか。このシナリオだと、株価の下落は今年後半ということになります。日本の株価は、米国連動の傾向が強いですから、やはり後半にかけて下落と見るほうが自然だと思います。

 

株式市場が「正常化」するのはいいのですが、金融市場はしばしば過剰反応を起こすことがあります。兜町の有名な格言のひとつは「山高ければ谷深し」で、下落どころか暴落になるおそれもあります。

 

財政もコロナ対策で健全性からは程遠い状態で、インフレという仕返しを食らう可能性は十分にあります。その引き金は、エネルギー価格とか食糧価格の暴騰です。現状ではエネルギー価格よりも食糧価格が心配で、食糧価格を暴騰させる原因は、小麦やイネなどの凶作で、さらにその原因は気候変動です。こちらのほうは、「いつ起きてもおかしくない災害」ということになります。(下のグラフは日経平均株価の年末時点の株価を基にした年次ベースの推移=世界経済のネタ帳から)

 

いつ起きてもおかしくない災害

このところ地球規模での気候変動は、始終起きています。その原因は、二酸化炭素など温室効果ガスの排出による地球温暖化だとみられ、米国のバイデン政権も、日本の菅政権も「2050年のゼロエミッション」に真剣に取り組む姿勢を見せています。しかし、産業革命以来の人類による二酸化炭素の排出は、災害多発の臨界点を超えていて、すぐに収まるとは思えません。食糧危機に直結する干ばつのような災害は、これから何度も起きるでしょう。

 

日本列島は、東南海地震をはじめ、東日本大震災のような巨大地震がいつ起きてもおかしくはない地震活動期に入っているようで、首都圏に大きな被害が及ぶ大地震が起きれば、東日本大震災をはるかに上回る経済的な打撃を日本全体に与えることになるでしょう。

 

明るい予測も暗い予測も、考えればいくつでも出てきそうですが、「備えあれば憂いなし」です。何を備えるかはひとそれぞれでしょうが、辛丑の年頭にあたっての結論は「備え」です。

(冒頭の写真は2年前の元旦に写した松島に昇る初日)


この記事のコメント

  1. 杉浦 より:

    素晴らしい展望の話ありがとうございました。

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