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関係修復狙う断末魔内閣

2017.08.03 Thu
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安倍政権の最後になるかもしれない内閣の顔ぶれが決まりました。この顔ぶれをみると、「安倍1強」といわれ、我が道を突き進んできた安倍首相が森友・加計学園問題による支持率の低下にあわてて、国民との関係だけではなく、自民党内や霞が関(官僚)、さらには周辺諸国を忖度して関係修復をはかろうという狙いが見えてきます。その意図はわかりますが、逆に言えば、憲法改正など首相が任期中に実現しようとした政策は封印せざるをえず、もはや政権の延命をはかるだけの内閣になるかもしれません。

河野太郎氏の外相、野田聖子氏の総務相は、安倍政権に距離を置いていた人の登用だけに、サプライズといえますが、お友だち内閣と揶揄されてきた政権のイメージを払拭しようというのでしょう。河野氏の起用は、政策的には、これまでの中国や韓国などとのぎくしゃくした関係を修復したいという期待もあるのでしょうが、中国や韓国への「毅然とした姿勢」を安倍政権に期待していた人たちからすると失望させるものだと思います。郵政民営化に反対して一度は離党した野田氏の総務相としての起用も、過去のことは水に流そうという関係修復ですが、民営化路線を進める郵政グループの方向には、ブレーキにはならないと思いますが、アクセルから足を離すことになるのではないでしょうか。規制緩和を重視するこれまでの政権の姿勢に変化が出てくるかもしれません。安倍政権は、ふるさと納税の仕組みを積極的に進めてきましたが、これも変化しそうですね。

サプライズで思い出したのですが、このところ、ジャーナリストと称する人たちが、安倍政権に進言したり、政権から組閣情報を得たりしたことを、テレビで明らかにしたうえで、「サプライズになるが、中身は言えない」といっている姿を目にしました。ジャーナリストが取材の過程で、取材先に「進言」したり、秘密情報を得たりすることはありますが、堂々と「進言」を暴露したり、相手から得た情報を言えない、などということはありえません。国民の知る権利を代弁するのがジャーナリズムであり、権力に寄り添って、言えないというのはジャーナリズムの否定です。取材源の秘匿と勘違いをしているのか、ジャーナリストではなくタレントだというのでしょうか、政治家も堕落していますが、ジャーナリストと思われる人たちも堕落しているようです。

話がそれましたが、文科相の林芳正氏や農水相の斎藤健氏、防衛相の小野寺五典氏は、いわゆる政策通ですから、手堅い人事だと思いますが、林氏は文科省と官邸との関係修復、小野寺氏は防衛省と政治との関係修復が第一でしょう。文科省は8月末にも、加計学園の獣医学部の新設を認めるかどうかの決定をすることになっています。いくつも疑惑が出ているなかで、このまま新設が認められれば、教育行政に禍根を残すのは明らかです。たとえ新設学部の中身に問題がないとしても、国会で提起された疑問に対して、一度も記者会見などに応ぜず逃げ回っているような人物が経営する大学に獣医学部の運営をゆだねていいのかどうか、新任の大臣の責任は大きいはずです。

防衛省の官邸不信も高まっていると思います。防衛省からすれば、日報の隠ぺいすることで、大臣の承認を得ていたはずななのに、それを反故にされた結果、制服組を含めた官僚のトップが辞任することになりました。前大臣は離任式で、情報公開の必要性を訴えていましたが、あなたに言われたくない、という思いでしょうし、辞任した官僚への謝罪もなかったようです。いざとなれば、官僚を見捨てる政治家への防衛省の政治不信は強いでしょうし、国民からすれば、そもそも日報を隠したのはだれかという問題も含め、シビリアンコントロールの原則が守られているのかという疑問もあります。関係修復だけではすまないのが小野寺氏の仕事ということになります。

斎藤氏は経産省出身の改革派ですから、現在、農水省が進めている農協改革のアクセルをさらに踏みこむことになるでしょう。農業・農協改革を推し進めることは必要だと思いますが、総選挙が近いといわれるなかで、アクセルを踏みすぎれば、党内からの反発も出てくると思います。

内閣改造の意図は、政権の再浮上であり、延命ということでしょうが、いまの内閣支持率の低下の主因は、安倍首相への不信感であり、これで政権への不人気が回復するとは思えません。首相自身もそのことを理解しているのではないかと思います。将棋や囲碁を投了する間際に、ぼろ負けだと見せないように、双方の合意で形を整えることがあるそうですが、姿のきれいな内閣にして、投了の形を整えているようにも見えます。そうだとすれば、「重厚な布陣」にこそ、この政権の断末魔を見ることができるのかもしれません。

 


この記事のコメント

  1. 元七 より:

    「・・・・・・姿のきれいな内閣にして、投了の形を整えているようにも見えます。・・・」
     最後は形式にこだわって、みっともない辞職はしたくないということでしょうか。

     我々は、どんなやり方でも内閣総理大臣を止めてくれさえすればその方法は問いませんけど。 
     でも、秘密保護法や共謀罪、自衛隊海外派兵など軍事国家へひた走りしてきた安倍が、最後のトドメを目論む憲法改正を諦めたとはとても思えません。
     閣僚メンバーが誰であれ、安倍がトップに留まる限り、閣僚内で反対はしないでしょうから。
     
     彼の本質は、表面をゴマカシ糊塗して国民を欺き、本音を隠して目的の実現を図るというやり方ですからね。

  2. 高成田 享 より:

    たしかに、憲法改正が悲願の安倍首相は、そう簡単に憲法改正をあきらめるとは思えません。ただ、安倍政権と距離を置き始めた公明がすんなりと同調するとは思えませんし、国民投票で否決されると、当分、発議はできませんから、首相に対する不信感が強い世論の動向をみると、改憲はかなり難しくなったように思います。

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