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税金の無駄遣いの都道府県別、都市別一覧

2017.09.11 Mon

税金の無駄遣いを監視し、不正を追及する市民オンブズマンの全国大会が9月2日と3日に和歌山市で開かれ、山形県の会員の一人として参加してきました。各地で活動するオンブズマンが200人ほど集い、数多くの事例発表がありました。公務員が職務遂行のために日々発信しているメールも公文書であること。これをどうやって開示させ、追及の素材にしていくのかといった報告もあり、とても有益でした。

全国大会で先達に学んだことを山形県の税金の無駄遣いの追及にどう活かしていくのか。それは後日、報告するとして、今回は市民オンブズマンの全国大会に先立って行われた記者会見で特筆すべき資料が公表されましたので、ご紹介します。

全国市民オンブズマン連絡会議は大会前日の1日に記者会見を開き、2016年度の政務活動費の執行率調査というのを発表しました。都道府県や政令市、中核市の議会の議員が昨年度に支給された政務活動費をどの程度使ったのか(執行したのか)を一覧表にまとめたものです。これが都道府県の政治状況やオンブズマンの追及ぶりを如実に反映していて、実に興味深いのです。

政務活動費の執行率が一番落ち込んだのは富山市でした。2016年度に使われた富山市議の政務活動費は支給額の62.4%で、前年度から37.6ポイントも減りました。つまり、富山市議会は2015年度に支給された政務活動費を全議員が100%使い切り、「文句なしの全国トップ」だったのに、2016年度は3分の2しか使わず、残りの3分の1を「余りました」と富山市に返却したのです。この結果、富山市議会は全国48の中核市のうち、執行率が三番目に低い市議会になってしまいました(一番低いのは函館市議会の59.5%、二番目が長崎市議会の60.7%)。

富山では、白紙領収書を使った架空請求やカラ出張などが次々に発覚し、元議長を含め14人の市議が辞職に追い込まれました。悪質なケースについては有印私文書偽造・同行使の疑いで刑事告発されています。それに懲りて、市議たちが正直ベースで請求したら、2016年度は政務活動費が3分の1も余ってしまった、というわけです。裏返して言えば、それまではその分の税金をかすめ取っていた疑いがある、ということになります。

ちなみに、48の中核市のうち、政務活動費の執行率が高いところは①青森県八戸市議会の97.6%②愛知県豊橋市議会の97.0%③愛知県豊田市議会の95.4%の順です。20の政令市では①横浜市議会の99.6%②川崎市議会の95.7%③大阪市議会の93.4%が飛び抜けて高い。議員のみなさんが熱心に活動した結果、政務活動費をほぼ使い切ってしまった、という可能性もあるのですが、それはあくまでも「論理的にはあり得る」という話です。オンブズマンとして自治体の議会を監視してきた経験から言えば、それぞれ「無駄遣いの多い議会の順位」と考えていいでしょう。富山市議会の激変ぶりが何よりの証拠です。

都道府県別の政務活動費の執行率一覧も興味深い。執行率の低い県議会は次の通りです。
①徳島県議会の62.2%②兵庫県議会の65.2%③鳥取県議会の67.5%。兵庫県議会は、カラ出張を繰り返した野々村竜太郎県議(当時)が号泣会見をして有名になりました(詐欺罪などで有罪確定)。その後、ほかの議員も悔い改めて質素になった、ということでしょう。徳島県議会も不正が発覚したところ。鳥取県議会は政務活動費をガラス張りにする努力を重ねてきた議会です。きちんとすれば、政令市や中核市と同じく、都道府県議会でも政務活動費の執行率は3分の2程度に収まる、ということを示しています。

そうなると、政務活動費の執行率が高い都道府県議会はどこかが気になります。順位は次の通りです。①神奈川県議会 99.1%②鹿児島県議会 97.0%③熊本県議会96.3%④東京都議会 95.2%⑤京都府議会94.9%⑥長野県議会 94.7%⑦福島県議会 94.3%⑧香川県議会 93.6%⑨埼玉県議会 93.1%⑩福岡県議会 92.9%。この数字は東京、京都、神奈川、埼玉といった大都市の議会で無駄遣いがいまだに続いている可能性を示しています。大震災と原発事故からの復興に取り組むべき福島県の議会でも、このような政務活動費の使い方がまかり通っていることが悲しい。

政務活動費の無駄遣いを減らすために何をすべきか。市民オンブズマンたちの長い監視活動の経験から、為すべきことは明白です。収支報告書や領収書だけでなく、その明細である会計帳簿の公開をいっそう進めること。そして、政務活動費を一括して支給して後で精算する仕方をやめ、まず議員が自分の金で支払い、後で実費を精算する方法(世間では当たり前のこと)に変えることです。

政務活動費の一括前払いという手法は、経済が成長し続けて気前よく税金をばら撒いていた時代の名残りです。そんな時代はとうに過ぎ去ったのに、いまだに改めようとしない議員たち。彼らの意識を変えていくことが大切です。限られた資産をどう有効に使っていくのか。そういう時代になっていることを肝に銘じてもらわなければなりません。

 
≪参考サイト&記事≫
◎全国市民オンブズマン連絡会議が発表した「2017年度 政務活動費 情報公開度ランキング」。都道府県、政令市、中核市ごとの一覧は118~119ページ。兵庫県議会の政務活動費の執行率は46.7%と発表されましたが、65.2%の誤り。後日、訂正されました。
https://www.ombudsman.jp/seimu/seimu2017.pdf
◎2017年9月2日の毎日新聞の記事

≪写真説明とSource≫
◎政務活動費の無駄遣いを追及され、号泣して有名になった野々村竜太郎氏
http://www.huffingtonpost.jp/2014/07/09/nonomura-kokuhatsu_n_5569542.html


この記事のコメント

  1. 松本直次 より:

    政務活動費は「生」活費などと揶揄されていますが、制度の「建前」から考えても前払いというのはおかしなことと思います。一方、建前通りに使われるのならば、執行率が低いほど良いとはならないと思います。実際の執行率も例外の数県を除けば大差がないように思えます。種々の「経費」を限度額まで政務活動費に回しているということでしょう。
    2014年のデータですが、政務活動費の額は東京都の60万円が最大で、鳥取県25万円徳島県20万円はそれぞれ46位と47位です。ところが、人口当たりの議員数を比べると、東京都の10万人余りに対して鳥取県は約6分の1の1万7000人ほどです。活動報告書の印刷枚数や出席するイベントの数、事務所の家賃など、必要経費にも差があると思われます。
    一方、政務活動費を「県民一人当たりの負担額」からみると、東京都は6円ほどで、鳥取県は15円になります。同様なことが議員報酬にも言えて、議員一人当たりの県民の総負担額(月例報酬+政務活動費)は最小の東京都の約16円に対し、鳥取県は約60円と最大になります。

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