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日本語が変わるのか:関係代名詞型の用法など

2015.11.17 Tue
政治

次の文章は、この11月12日(木)、共同通信配信の記事として、「ヤンゴン共同」との書き出しで掲載された新聞の中の一節です。それは、内外で大変注目されたミャンマー総選挙を取り上げたもので、見出しは「スー・チー氏主導に」となっており、「野党、過半数で政権交代へ」との副題が付いておりました。あらためて引用しますと、

「政局の混乱がなければ、半世紀にわたり軍主導の政治が続く同国で民主化を訴えてきたスー・チー氏主導の政権が来年3月、初めて誕生する。」と言うものです。

ただ、ここでは、この記事の内容について論じるのではなく、この文章の構成について、所見を述べ、どうも日本語に従来に無い用法が出始め、それらが次第に増加しつつある模様と言う事を申し上げるのが、主たる論点ですので、御承知下さい。

まず、この長い文章は、「誕生する。」と読点で終わっていますから、ここが一文の終わりと言う事が分かります。その主語は、「政権が」ですね。続く「来年3月、初めて」は時期を示す副詞句になります。

問題は初めの方にあります。まず、「政権が」に、「スー・チー氏主導の」という形容詞句がかぶさり、その形容詞句に「同国で民主化を訴えてきた」と言う別の形容詞節が懸かって、今度はその「同国」に「半世紀にわたり軍主導の政治が続く」と言う形容詞節が更に乗っかかって来ている構造になっています。実に複雑です。

各形容詞節は、それぞれが主語と術語をその文中に持っています。この事で分かるように、これは一文としてまとめているものの、英文などの欧文ならば、関係代名詞に当たるもの、それもそれらを複数使って、修飾関係をすっきりさせた上で、ひとつの文章に納めたと考えられます。

ところが、日本語には関係代名詞が無いので、その日本語への訳出には皆苦労する一方、日本文を作るときは、この引用文の如く、重ね、かぶせて、複雑な長文を作る事となるのではないでしょうか。関係代名詞が無いゆえの文章作りの工夫を行うわけです。関係代名詞に似た関係副詞も日本語にはありませんから、問題は同じです。

かくて、こうした、複雑でやたらと枝葉を茂らせた文章が増えていますので、日本人もそして外国人も困る事が段々出て来ているのではないでしょうか。何とか工夫して、簡明な日本文を書くように心がけたいものです。ジャーナリズムの皆さんにも呼び掛けたいですね。引用例文の如く、あれもこれも盛り込み、そして無理に短くしようとして、複雑系文体を生み出している感じがしますね。

 

マイナンバー

別の話題に移ります。この11月から、国民ひとり一人に12桁の番号を与え、各自が使うこととなる仕組みが始まった由、各戸にそれが書留で送られつつあるようです。それは、通称「マイナンバー」と言ばれる由、ただ、単に愛称では無く、政府自身も広報やホームページでしきりと使っています。斯くて、それは実質公式の呼称とも言えるようです。

とはいえ、やはり法律上の名称があって、根拠法は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」となっています。そして、その主眼は社会保障と税金にある由、そう言えば、在米の折り、良く耳にした「Social Secutity Number」と言うのがアメリカにおける、それに相当するもののようで、国は違っても共通した制度趣旨があるように思われます。

ただ、マイナンバーとは、英語の如き表現を使っていても、和製英語と言う事が丸わかりの言い方ですね。

こうした言い方には、これまで、この国で登場し、定着した和製英語と共通したところがある感じがします。それらを挙げれば、マイカーとマイホームでしょうか。何れも英語らしき言い方を、外来語に使うカタカナ語と用いて表していますが、ともに典型的な和製英語で、実質日本語です。でも、大和言葉では無く、漢語でも無いのです。

なぜ、では、日本人はこうした言い方に英単語を用いるのでしょう。思うに、そこには、昔からの「大和ことば」では古い感じがしますし、漢語や漢字では明治時代と違って、今や日本人の語彙創造力が衰えてしまっています。そして、今時の日本文化を出せる新しさが欲しいし、堅さや世間的なものを外して、そうした事からも中立的でありたいとなると、欧米の言葉、取り分け英語系の単語や表現法への傾斜が出てくるようなのです。

かくて、マイカー、マイホーム同様、マイナンバーも、官製の側面があっても、使われて行く事になるような気がします。皆さんはどう評価されますか?


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