大手メディアが伝えない情報の意味を読み解く
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朝日新聞デジタルと東洋経済オンラインが競合する時代

2016.04.13 Wed
ニュースをみるとバカになる

東大総長が入学式で「新聞を読みますか?」
東大の五神真総長は、今年の入学式のあいさつで、新入生に向かって「皆さんは毎日、新聞を読みますか? 新聞よりもインターネットやテレビでニュースに触れることが多いのではないでしょうか。ヘッドラインだけでなく、記事の本文もきちんと読む習慣を身に着けるべきです。」と述べました。若年層において新聞を読む習慣がかなり減少している現状を念頭に置いた発言なのでしょう。

テレビと新聞をやめた友人
一方、私の友人に新聞をやめたという人がいます。知的関心の薄い人ではありません。大企業の社員研修の仕事をしている彼が個人メルマガの最新号で「テレビと新聞をやめました。情報デトックスです。とっても気持ちがいいです」と先日“宣言”しました。最低限のニュースはラジオで聞いているそうです。
たいへんな読書家の彼は、日々刻々、刹那的、断片的な情報が膨大に押し寄せてくる情報環境を遮断して、自然や動物に触れる落ち着いた生活をめざしているようです。

ニュースを見るとバカになる?!
私もときどき、もう新聞なんかやめてしまおうかと思うことがあります。そういう気持ちが生じるのは、ツンドクにあふれる書棚を眺めたときです。ツンドク群を見ると、このあとの人生でどれだけ読めるだろうかなどとふと考えてしまうのです。
そんなときにふと思い出すのが『ニュースを見るとバカになる10の理由』(ジョン・サマービル著)という本です。1999年に書かれ、日本で翻訳が出たのが2001年でした。「マスコミが製品として売り出しているのは「変化」であって「英知」ではない」とこの著者は言います。確かに、殺人事件の発覚した当初のニュースのような「途中経過情報」は、あとから読み直してみればわかるように、その日の目新しい変化ではありますが、いたって不完全であり断片的な情報であるわけです。時にはまったく事実と違っていることさえあります。事件を形成している要因や構造がわかり、それがまとまって書かれるのはかなりあとになってからです。多くの事件はそこまでのフォローさえなされません。

たとえば、ある日、新宿のゴールデン街で火災が起きたというニュースが朝刊に載っていました。その日の夕刊には、防犯カメラに不審な男が写っていたという続報が載っています。ゴールデン街の常連客など直接関係している人にとっては別として、この時点で記事を逐一読んでもほとんど何も役立つことはありません。

第一報・速報は読まない
そこで私の新聞やネットのニュースの読み方の方針は「ニュースは読まない」というものです。新聞をやめる気はありませんが、速報的な記事(事件や事故について概略的に事実だけを報じるストレートニュース)はせいぜい見出しを見るだけにして、本文は原則として読まないことにしています。つまり途中経過にはつき合いませんよということであり、なるべくまとまった解説や分析、論説などに限って読むというのが基本方針です。(というのは実は半分エーカッコシーで、やっぱり興味ある話題だと途中経過情報だろうと不完全情報だろうと、つい読んでしまうんですけどね(苦笑))。

ずっしりと重い記事を
さて、冒頭ご紹介した東大総長の発言もよく読むと、新聞をとれとか、新聞を読めとは言ってないことがわかります。紙の新聞だろうが、インターネットのニュースサイトだろうが、見出しだけが並んでいるのをチラッと見て終わりにするのでなく、その本文も読めということを言っています。ただ、あえて言えば、途中経過的な速報記事よりも、長くても立体的に組み立てられた記事や解説、評論をできるだけ読むようにしようと言ってほしかったところです。実際、既存の新聞から多くの記事を選択して配信しているYahoo!ニュースやNewsPicksを見ていると、意外にも速報的な記事ばかりでなく、詳報、解説、評論といった長めの記事も混ざっています。

新聞の競合相手の増加
ところで、速報記事よりも詳報、解説、評論といった記事を重視するとした場合、それらはいまや新聞サイトの“専売特許”ではありません。実際、次に並べるようなサイトには、速報記事ではない、読み応えのある解説や評論がたくさん載っています。つまり、テレビに速報の地位を奪われた新聞は速報記事ではないところで勝負しようとしてきたのに、ネット上でまわりを見渡すと、いつのまにか競合相手がたくさん登場してきているのです。象徴的に言えば、朝日新聞デジタルと東洋経済オンラインが競合する時代です。競合相手には個人の有力なブログも増えています。メジャーもマイナーもすべて横並びにしてしまうインターネットの大海原の中で、新聞の“雑誌化”が自ら競合相手を増やしてしまっていると言えましょう。

東洋経済オンライン         http://toyokeizai.net/
ダイヤモンドオンライン    http://diamond.jp/
日経ビジネスオンライン   http://business.nikkeibp.co.jp/
ニューズウィーク日本版   http://www.newsweekjapan.jp/
現代ビジネス(講談社)    http://gendai.ismedia.jp/
BLOGOS              http://blogos.com/
SYNODOS                    http://synodos.jp/

現場を歩いて書く迫力ある記事を
では、新聞の独自性を発揮するにはどうしたらいいか?私が期待するのは、新聞記者ならではの、現場をよく歩いて、徹底的かつ多面的に取材して書く記事です。上で紹介したサイトの筆者の多くはいわば書斎派であり、よりどころとする事実は新聞に頼っていることが多いと言えます。新聞社という組織に所属する記者は出張費や取材費を相対的に多く使えます。海外特派員を置いている強みも発揮できるはずです。書斎派はテーマの設定や視点・切り口とともに読ませる文章力が勝負ですが、それに対して新聞記者の場合は、それらも大事ですが、とにかく歩いてほしいということです。現場を歩き回って、すぐれた眼力を発揮する記者を、組織として支えるという“タレントプロダクション”の性格を鮮明にしていくのがこれからの新聞社のあり方のような気がします。


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