随分進んだと言う「核融合」と、頼もしい子供達
この4月30日(土)、お台場の科学未来館で「核融合」をテーマにした一連の講演が在り、併せて展示が行われているというので、足を運んで参りました。取手からは随分遠く、特に最後は「ゆりかもめ」と言う無人運転の新交通に乗る必要があり、苦労しました。と言うのも連休で多くの催し物があり、大変混んでいたからです。帰途、珍しい事に車掌らしき人のアナウンスが聞こえましたので、「無人と言うのに何故?」と確かめたところ、隣に居た、よく利用する人が「極くたまに、訓練で乗っている事があります。」と教えてくれました。世の中、いろいろ在りますね。
核融合と名付け、核分裂と違うと言うが?
さて、会場に入って間もなく、当日説明役で来ていた方(核融合研究所の教官で、名大の助教と言う。岐阜県の土岐市にある研究所に所属)に尋ねました。その日は、皆さんがそうした役廻りで在ったからか実に懇切に教えて下さいました。まず、「核分裂は天然の原子炉が在る如く、地上で自然に起きる事が在るが、核融合はそういう事は無い」との事ですので、「太陽は自然に起きている核融合でしょう。」と聴きますと、「太陽は巨大で、もの凄い重力が作用していますから、中心部は約千七百万度にも達し、水素が融合、ヘリゥムが出来ると言う核融合反応が自然に起きます。でも遙かに小さい地球ではとても、そうしたことは起きません。だから、人為的に工夫する必要があり、非常に苦労しているのです。」との事でした。このお話は、「これまで核融合こそ恒星でいっぱい起きていて、宇宙に沢山在り、これに対し核分裂はやや人為的との印象を持っていた」だけに、このお答えは重いものを感じました。
とは言え、「私が小学生の頃、遠からず核融合が実用化されて、エネルギー問題は究極的に解決を見ると聞きました。」と率直な疑問をぶつけましたところ、「自分もそうした話を幾度も耳にしましたが、先へ先へと延びて行きました。」と三十台の前半とみられる、その青年科学者は語ってくれました。さりとて「核融合は核分裂と違って放射能などの問題があまり無いと聞きますが、...」と確かめましたら、「ともに「核」と呼びますから、「一般の人にはそれが怖い、危険と言う印象をどうしも与えているようです。」との事でした。
相対性理論のお話
この日の講演で、一つ印象に残ったのは「ウラシマ効果」と言う言葉です。これは最近、日本のSFで、お伽話の「浦島太郎」を引いて使うようになったからのようですが、「ビックバン」に係る「インフレーション効果」の提唱者として著名な佐藤勝彦先生が、今回の講演の中で、この言葉を使用されたのには驚きました。先生は1905年アインシュタイン提唱の「特殊相対性理論」を解説する時に、例示として「光速の99.98%」で飛ぶロケットが出来たとして、そこに乗った青年が1年後に地上に帰還するとすると、其処では何と50年程経っていて、弟がすっかり年上のお爺さんになっていたと言う物語を話されていました。先生は話を面白く且つ分かり易くするため、こうした例示を示されたのだとと思いますが、事実上フィクションで将にウラシマ効果が起きたと言う一例ですね。
実際、講演会場には、親子連れが随分居て、小中学校生などが熱心に聴いていました。
主宰者の創意工夫と努力には頭が下がりますし、こうした子供達の中から、学者、研究者、技術者等の育つ事が期待されます。
大型ヘリカル装置(LHD)の事
さて、日本も国際的な取組みの一環として、核融合科学研究所の中に、大型のヘリカル装置(LHD Large Helical Device )と言う核融合実験研究施設を作り、実験研究を進めている由です。ここにヘリカルとは螺旋の由、その場所は、岐阜県の土岐市の下石と言う所に在る由、講演の最中、実況中継が在り、この施設の螺旋の美しい管が写っていました。結構、大きな装置です。
ところで、地上には太陽のような巨大な重力は無いわけですから、その代わりの力が必要となります。其処で、この話題のときに、講師を兼ねた司会者が会場に質問を投げかけました。それは「何かを閉じ込めるため、別の何かが要ります。 それらは何でしょう?」と言うものでした。すると静かな会場の中から、小さな女の子が「プラズマを閉じ込めるため、磁石が要ります。」と元気に答えたのでした。驚きました。これまでのお話を聴いていて、良く分かっていたのです。そもそも関心が在るのかもしれませんね。
核融合を起こすには、物質を暖め、通常物質の三態と言われる個体、液体、気体の何れでも無い、もっとバラバラで、分子、原子より更に分かれ、原子核や電子が飛び回る状態が必要とされます。これをプラズマと言う由です。 このプラズマの状態を保ち、閉じ込めて、更に高温にすると、核融合が起きるのです。これは強力な磁力線で、プラズマが同じ所を回って逃げられずに居るから加能になる由です。この磁力線は凄まじく強力な超伝導磁石で生み出される由です。核融合によって、重水素や三重水素と言われる物質がくっついてヘリウムに変わり、その時質量が少し減って、それが莫大なエネルギーに代わる由、そこで得られる熱で発電すると言う事になると聞きます。ここに、重水素、三重水素とは、通常の水素が陽子1個なのに、陽子が一つの外、中性子が一つか二つもある水素の同位体を言います。(それらは海水中には結構在るので、これを使えば、エネルギー源として実際上無尽蔵になると言われます。)
所長で講師の竹入先生によると、ヘリカルの実験・研究は順調に進展していて、旨く行けば、2040年代には実用化、つまり初の核融合発電所が出来るのではないかとのことでした。このコメントには驚きました。ある年限まで示した設置と初動の時期のお話は、これまでに無かったからです。もとより、難しい課題に多々逢着することがあるやもしれず、国際的な環境など諸般の情況変化も在る事でしょう。とは申せ、当事者のこの自信に敬意を評したいと存じます。
ITER 巨大な国際的取り組み
国際的に熱核融合の研究については、より大きな仕掛けとして、ITER(イーター 国際熱核融合実権炉 International Thermonuclear Experimental Reactor の略称 があります。この名称は現在公式には、「iter」(ラテン語:道)に由来する、とされている由です。
これは、日、米、EU、露、印、中、韓の七極が参加する巨大な体制で、具体的な実験・研究施設は2006年にフランス・カダラッシュへの建設が決まりました。また、日本はこのITER計画の当初からの計画設立国でその主導権をとって推進して来たといわれます。ただ、この方式は「トカマク方式」で、ヘリカル方式など他の方式とは異なります。
このITERは既に整地が終わり、建設段階に入っている由ですが、今回の講演などでほとんど紹介がありませんでしたので、これ以上触れる事は控えます。
ただ、トカマク方式は長年の実績があり、大変な高温を既に達成し来た様です。一方、ヘリカル方式は近年着実に成果を挙げている由、また他に「レーザー慣性閉じ込め方式」なども追究されていて、そのレーザーの利用についても進展を見始めているようですので、素人ながら、各取組みの分担、連携、競争、共闘などを期待し、遠からずの良き成果に繋がる事を念じております。
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