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沖縄戦の映画:HACKSAW RIDGE:ほとんど英語、所々に日本語が混じる

2017.06.25 Sun
政治

凄まじい迫力在る映画をみました。 全国市中でのロードショーが、この6月24日からで、それは、沖縄での組織的戦闘が終わった日を意識して設定されたものと思われます。実際、米軍の沖縄本島上陸は、昭和20年(1945)4月1日に開始されており、牛島満司令官の自決は、同年6月23日だからです。
この米映画では、この自決を象徴すると思われる割腹・介錯のシーンがありました。
米映画で終盤ながら、こうした場面が出てくるのはは、往時の日本軍将兵を理解せんとする、米国人のそれなりの意思を感じさせる所であったように思います。

主人公の特異な行動とは・・・。

この映画の主題は、主人公の米兵士「デズモンド ドス」(アンドリューガーフィルド が好演)が、訓練時と実戦時に実際取った特異な行動でした。
そうです。この映画は実話で、それを元にしています。

実在の人物「デズモンド ドス」は、2006年に87歳で亡くなっていますが、その数年前に、映画化について遂に承諾を与えています。
斯くて、此の重みのある実話が映画となるまでに五十年もの年月を要したわけですが、それは、その人が静かな生活を送ることを選んだからと申します。
彼は、注目を浴びて、マスコミに追っかけられるような事を嫌ったからなのでしょう。
それは、実話をもとにした、ドスのこの映画での言動を実視して居れば好く分る事です。

事実、ドスは1945年10月、時のトルーマン米大統領から、「良心的兵役拒否者」として、最初の名誉勲章を授かっており、映画化のお話しは、そのときから在っ言います。自身は、この立場を「良心的協力者」と呼んでいた様です。

話は元に戻りますが、ドスは、第二次大戦で徴兵されています。自ら述懐するところによれば、真珠湾攻撃を受けたがゆえに、自分ひとり軍隊に入らないことを潔しとせず、それを契機に、結局入隊し、訓練に従事するものの、自らのキリスト教宗派の信仰ゆえ、最後まで武器を持つことを拒否したのです。その態度は徹底したもので、護身用の短銃や短剣を帯びることを拒むものでした。

これは米国陸軍刑法に反し、違法であるとして、彼は軍法会議に掛けられます。
そこで、ドスは、除隊の圧力に抗し、武器を帯びないが、仲間を救護するため、
衛生兵としての勤務を認めて欲しいと年来の主張を訴えたのです。

いろいろの事件や遣り取りが在りましたが、これが結局認められます。
「合衆国陸軍の法規によれば、良心的兵役拒否者の場合、武器の不携帯を認める条項があり、裁判長に当たる将官がそれを読み上げ、結審としたのです。

しかし、この措置は、他の下士官や兵の大変な不満と拒絶感を引き起こし、ドスは、凄まじい挑戦と暴行を受けます。 その現場に駆けつけた部隊長は、それを抑制した上で、誰が実力行使に及んだのかと訊ねます。 ドスは、暫時しても答えず、結局「何も無かった」と言い張りました。

詰まるところ、ドスは、情況を察知した隊長に受け入れられ、一切の武器を帯びず、衛生兵として本格的に従事するのです。隊員達もやむをえんと承知します。

間もなく、部隊は第66師団の一支隊である後続将兵として、沖縄作戦に派遣されます。

そこは、日本の沖縄守備隊の司令部のある首里に近いところで、沖縄本島の南端に近い場所に位置する海岸防衛線に在りました。
これまで、攻勢を掛けて来た、米軍の他の部隊が損害の続出で交代し、66師団が取って代わったのでした。

ハクソーリッジの攻防

眼前に展開するのは、約三十メートルもある急峻な崖で、日本名で前田崖と言い、英名は、形状からか、いつの間にか、HAKSAW RIDGE (のこぎり崖)となっていました。
崖の上は、比較的平らな高地で、多数の日本軍守備隊が陣取っていました。
この崖を奪い、この守備隊を打ち破るべく、後続部隊として、ドスの隊が投入されたのです。
先軍により、その崖には、長い縄ばしごが掛けられていました。
ドスのなどの隊は、其処をあらためてよじ登って制圧し、突破する役割を命じられたのです。

まず、米海軍の戦艦による艦砲射撃が始まります。もの凄い大型砲による連射で、守備隊は全滅したかに見えました。
そういう印象も米兵の間で語られます。
されど、・・・。艦砲の猛烈な砲撃が一旦終わるとドスなどの部隊が、縄ばしごを登り始めます。

しかし、日本守備隊はしっかり残っていました。米軍を迎え撃つため、まるで地面から沸いてくるようでした。

まもなく、恐ろしい戦いが、日米両軍の間で繰り広げられます。
至近距離で、お互いに、小銃や機関銃を撃ち合い、手榴弾を投げ、其処に、米軍将兵が熱射する火焔放射器が加わったのです。将に、血みどろの戦い、激しい白兵戦の渦中に放り込まれた感がありました。
CGによらず、実写に拠っていると言い、其処にメル・ギブソン監督の真骨頂が出ていると言います。
私が今まで見た中で、最も迫力在る戦闘場面が将に眼前に。
正直、気が変になる感じがしましたね。

早速、衛生兵としてのドスの活躍が始まります。
味方が負傷するのを見ると、直ぐに掛けより、気付けのため、モルヒネを打ち、安全な所へ避難させ、点滴を打ち、何とか救います。「神よ後一人、更に一人」と言いながら、救っていったのです。こうして、何と七十五人の米将兵がドスの手で助けられ、避難できました。

中には、日本側守備隊がコンクリートを用いて作った洞窟に、ドス自身が紛れ込んでしまう場面があり、偶々居た、負傷日本兵に英語で話しかけながら、モルヒネを投薬するシーンがありました。つまり、彼は実は、日本兵も助けたのです。
敵も味方も無かったのでした。
ハクソーでの後半、日本守備隊があまりに強く、戦力に勝る米軍部隊が一旦撤退へ

制海権、制空権を握り、火力、機動力、破壊力全てに優っていた米軍でしたが、この崖付近の攻防では日本側が踏ん張り、米将兵を圧倒し始めます

すると、米軍66師団は叶わんと一旦引きます。
こういうことも、一局面ではあったのですね。すると、間もなく、凄まじい艦砲の嵐が襲います。沖縄は完全に孤立、米軍に包囲されていたのです。 所謂「鉄の暴風」ですね。

戦艦大和は水上特攻を試みますが、米航空機により、撃沈され、既にこの世にありませんでした。

やがて、このハクソーリッジの攻防も決着、米軍が全体を制圧し、沖縄戦は、終焉を迎えます。

ドスの評価

この映画の意義は、ドスの部隊長であるグローバー大尉の次の言に集約されているように思います。

「戦争は人間の最も残虐な部分を引き出す。だが、時に戦争は人の素晴らしい部分を引き出すこともあると思う。 この映画は、今までに無い新しい視点で戦争をとらえた。」

この作品は、色んな切口で迫って来る力作だと思います。


この記事のコメント

  1. 中北 宏八 より:

    出来れば見たいと思います。

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