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「華氏119」 と言う米国映画

2018.11.04 Sun
政治

「華氏119」 と言う米国映画
平成30年11月
仲津 真治

この原題は、直訳すると「華氏11/9」と言う標題でして、二年前の11月9日確定
の米国大統領選で、圧倒的な予想に反して、共和党のドナルド・トランプ候補が
民主党のヒラリー・クリントン候補を接戦の末、敗北させた事を象徴する、マイ
ケル・ムーア映画監督命名の映画の題名です。 その邦題は、「華氏119」と言い、
一見華氏で示した気温と思われますが、話題となった「華氏911」と言う作品と同
じく、事件や事の起きた日付から来ています。

作品は多岐多様に亘り、あちこちの事象に飛んで、フォローしづらく、混乱させ
られますが、このまま、トランプ政権が続くのは問題が在り過ぎるとの切り口で
ムーアは一貫している様です。

1  それにしても、知名度が高く、実績も多く、初の女性大統領への期待が高かっ
たクリントンが破れ、無名に近く、政治的業績が殆ど無い、泡沫型のトランプが
何故勝ったのでしょうか。 この点について、ムーア始め、諸分析はまず、米国
特有の選挙制度を上げて居ます。米国大統領選挙では、大統領を米国民が直接選
ぶのでは無く、国民は先ず国民自身が投票して各州の選挙人団を選び、各州で
一票でも多く獲得した大統領候補が、その州の選挙人団を総取りし、その通りに、
本選挙で選挙人団が投票し、今度は大統領自身を選ぶと言う方式を採っているか
らと申します。 確かに選挙の実務は懸かる制度に則り、所要の各手続きを踏ん
で進みます。

斯くて、国民の選挙では、クリントンが総得票数を約六千六百万取ったのに対し、
トランプは約六千三百万に止まりました。負けていたのです。他方、獲得選挙人
団の数では、逆にトランプが上回り、その人が当選となったのです。即ち、有効
国民投票総数の過半乃至第一位を取った者が勝利を手にすると言う、通例型の仕
組みでは無く、推移しています。

この基本には、米国が個々の国民から構成されるのではなく、「The United
States」、つまり各州を構成員とする連邦国家であることが根底に在ります。

2  その上で、ムーア自身の独自の分析によれば、彼の出身地でもある五大湖周辺
のペンシルバニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンの各州、即ち、所謂
「ラストベルト」に於ける民主党クリントン陣営の選挙活動の少なさが際立だっ
たと言います。 これらの四州は人口も多く、斯くて選挙人の割り当ても多く、
伝統的に民主党の支持基盤なのですが、今回はここでのクリントンの得票が全く
伸びませんでした。

対して、トランプはこの四州で精力的に活動、演説しました。 結局、こうした
ことが、が大きく響いて、クリントンは全米での総得票での優位にもかかわらず、
獲得選挙人数でトランプを下回り、大統領選挙としては勝利に届かなかったので
す。

斯くて、ラストベルトの申し子とも言うべきムーアは切歯扼腕しました。

この結果を見て、また、その後大統領に任じたトランプの諸活動や言動を観照
して、映画人として決意して、この作品の製作に至ったようです。 さすがプロ
の映画人と思われるのは、その諸材料となるものを、しっかりと撮り、集積して
来た事です。

3 すると、トランプは言いました。「映画監督のムーアと夕食を取ったと、・
・・・。」 でも撮影されたものをみると、それは、喫茶を含んだ会見に止まっ
ていました。 夕食まで交わして居ません。これを確認したムーアは、トランプ
が夕食という作り話を口外、皆に吹聴する前に、手を打ったのです。 でなけれ
ば、ムーアはトランプと仲良く、実は夕食まで取り合う仲だ言うフェィクニュー
スがトランプから世に広められるからです。

斯くて、「油断も隙も無い」と見たムーアは、この映画即ち、「華氏119」の製作
・上映に懸かりました。 この11月6日の米国中間選挙の前にです。

そして、上映はトランプの報道が多い、日本ででも・・・・。 日本には、在日
米軍などに限らず、大勢の米国人がいます。この人達は、米国市民として在外で
も投票権を持っています。 斯くて、その日本では、この11月2日から上映が
始まりました。

4 監督インタビューまで見ると、ムーアは、トランプという大衆型政治家に
ヒトラーの姿をみている様です。 そして、トランプにヒトラー以上の危険性を
見いだしています。 曰く「ヒトラーにはイデオロギーが在った。 しかし、
トランプには何も無い。 自分以外何も信じていない。 」とし、「国家の指導
者が自分だけだけしか信じるものが無い」と言うのは、「極めて危険である」と
断じています。

そのヒトラーは、自由民主主義を基調とするドイツのワイマール憲法体制の中で
のし上がり、権力機構に食い込み、遂に全権を掌握するに至っています。斯く、
ムーアは警鐘を鳴らす分けです。

5  マイク・ペンス副大統領についてのコメント

ムーアは、仮にトランプを弾劾などにより、倒したところで、
副大統領のペンスが大統領に昇格して出てくることを警戒していると言う
民主党陣営の懸念の声に対し、「ペンスは、キリスト教原理主義者だ。

聖書の言う通り、恐竜が地球上に出現したとと言っている男だ。
充分、論破できる。」と主張しています。

斯く、ムーアは色んな可能性に備えつつ、米国の自由民主主義のため、闘って
行こうと言う分けで、現に、自身の有力な手段である映画や会見等を
実践しています。

以上、ご参照下さい。

なお、具体的な諸事例が幾つも作品中に紹介されていますから、御自身で御覧な
って下さい。 私は、率直に申し上げて、鑑賞に値すると思います。


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