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バーバパパの人力発電

2018.05.07 Mon
発電床アート1

発電床®のミニ舞台上で、フラメンコダンサーが踊り、烈しいステップが「光の音楽」に変わる

フランス生まれの人気絵本、お化けのバーバパのことを知っていますか。子どもたちに大人気、ふにゃっとしたからだで、どんなものにも変身できるバーバパパは、人間がエネルギーを無駄使いし、環境が汚れることに無関心な人間社会に、いつも腹をたてています。黒い煙を黙々と煙突から空に排出している人間の工場を横目にしながら、バーバパパ一家は、太陽や風、水のエネルギーを使うエコな生活をしています。

そんなバーバパパ一家のうちに、寒い寒いクリスマス・イブの日、サンタクロースがプレゼントを届けに来ました。開けてみたらなんと、プレゼントは暖かい南の国の動物たちだったのです。動物たちは寒い冬にぶるぶる。バーバパパたちは、森の木を切って暖房しようとしましたが、森の動物たちが大反対。天気が悪くてお日さまの力は借りられず、水の力を借りようとしても川が凍って水車も使えません。風もなく、風車も動かないのです。

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アネット=チゾン/タラス=テイラーさく やましたはるお やく

『バーバパパのプレゼント』(講談社、pp.22-23)

さて、困りました。バーバパパたちは、どのようにして、この難関を克服したのでしょうか。そうです、みんなで自転車をこぎ、その力で電気を起こして、南の国の動物たちを暖めてあげたのです。これなら、自分たちも暖まるし、一石二鳥ですね。

この物語をヒントに、昨年5月、NPO法人人力エネルギー研究所を設立した。究極の再生可能エネルギーとして「人の力」を位置づけ、太陽も、風力も、水力も使わない「人力発電」によって、どこまでのことができるのか、少しづつだが挑戦を始めている。

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河口湖の花火大会「湖上祭」で、人力発電カキ氷を実施

自転車こぎにより発電した電力を使って、さまざまな催しを可能にしているのが、富山県高岡市に本拠を置く「創作機械工房ピッコロ」である。独自開発した自転車こぎマシンによって、人の乗れるミニ新幹線を走らせたり、メリーゴーランドを回転させたりする。人力によって、ちょっとした遊園地ができあがるのだから恐れ入る。昨年の夏、河口湖の大花火大会「湖上祭」のとき、富士山と河口湖の清掃や野生動物の保護にたずさわっている「富士山アウトドアミュージアム」の協力で、人力発電によるカキ氷の販売をやってみた。大人の発電能力は100ワット、子どもでも30ワットの力があるので、屋台でよく使われているようなカキ氷機がくるくると力強く回ってくれる。

発電の力は強くないが、「音力発電」の開発した「発電床®」は実に興味深い。足で踏む力で、接続したLEDが不思議な輝きを見せる。30センチ四方の発電床にLEDが100個ついている。これを9枚組み合わせて90センチ四方の小さな舞台を作り、発電アートの試みを進めている。まず実験的に行ったのが、フラメンコダンサーとのコラボである。東京・八丁堀の曾我辺靖子フラメンコスタジオ”エルマナス”で、「踊りを光に変換する」初めての試みを実現させることができた。フラメンコダンサーの鈴木舞さんがセビリアの踊りSevillanasセビジャーナスに合わせて激しくステップを踏むと、発電床から伸ばしたLEDがホタルの光のように点滅し、見たこともない表現空間が現出したのだ。

発電床タップ

谷本沙羅さんが発電床®舞台でタップを踏んでLEDを輝かせる

当時まだ小学6年生だった谷本沙羅さんもこの発電床に関心を示し、タップダンスでLEDを輝かせたいと考えていた。世界を公園にする夢ある活動を続けているCePic(みんなの地球公園)がトレッサ横浜で開いたイベントで、谷本さんと発電床のコラボが実現、続いてNPO法人人力エネルギー研究所の河口湖における活動拠点でも、谷本さんに発電床タップダンスを披露してもらうことができた。

私たちは、発電床®を使った人力発電によるアクティビティを「発電床アート」と名づけ、さまざまな展開を考え、実践しつつある。2017年7月には、親子のための映画会が開かれた河口湖のステラシアターロビーで、「足踏みしてモーツァルトを光の音楽に変えよう」プロジェクトを実行した。モーツァルトの「フィガロの結婚序曲」や「トルコ行進曲」に合わせて、会場を訪れた子ども達に、発電床®の上で自由に飛んだり跳ねたりしてもらったのだ。

モーツァルトを光の音楽に

モーツァルトの音楽に合わせて発電床®の舞台で子供たちがダンス。モーツァルトが、「光の音楽」に変わった!

9枚の床のどこを踏むかを、踊り手や飛び跳ねる子どもたちが意図しない限り、100個×9=900個にのぼるLEDのどれが光るかはすべて偶然となる。この偶然のアート、つまり非意図の意図が生み出す表現が、発電床アートの特色であり、同じパターンのLEDの輝きは二度と見れないことになる。踊り手が足元の発電床を意図して踏み込み、あるパターンのLEDの輝きを生み出す次のアート形式を、ある種のアルゴリズムを取り入れることによって、いずれ実現したいと考えている。

IMG_9870私たちは、人力発電によるアートを現出する場を「発電芸術館」と名づけ、特許庁での「商標登録」を済ませている。河口湖の活動拠点に小さいながら「人力発電の海ホタル」を登場させ、合わせて日展特選二回の気鋭の女流画家・川田恭子さんの日本画展を3月31日(土)から4月22日(日)まで開催した。その報告は、次回にまわさせていただく。楽しみにお待ち願いたい。

 


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