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仏映画「ロダン」を鑑賞して     

2017.11.16 Thu
文化

仏映画「ロダン」を鑑賞して
平成29年 2017  11月
仲津 真治
1) 久々の映画館

渋谷の東急文化村で、このフランス映画の大作を上映しているというので、時間を見つけ、久々に映画館へと足を運んで参りました。 暖かめの辺りは若者中心に大混雑、されど館内は程々の入り、鑑賞後は秋雨そぼ降る中を歩いて地下鉄の駅へと歩を進めました。

この映画を見ようと思った動機は、有名な近代の彫刻家「オーギュスト・ロダン」のことを実はほとんど知らないので、この上映の機会にと思ったことがあります。

それにしても予想したとおり、迫力あるシーンは無く、典型的なフランス映画の観を呈していました。 ただ、ひとつ印象に残ったのは音で、「靴の響く音」、「床のきしむ音」、「水を含んだ布を絞る音」、「水が流れ落ちる音」などを実に鮮やかに再現していることでした。 もっとも、そのために特段の工夫をしているとの解説は、エンディング・ロールにも現れませんでした。

2)  ロダンは彫刻家と言うより、むしろ塑像家

あれと思ったのは、彫刻家ロダンと言いつつも、制作中の姿は「のみ」を持つ場面などほとんど無く、当人は粘土などを手や指で「塑像」するシーンが大部分でした。正確に言えば、彫刻家と言うより、むしろ塑像家と呼んだ方がぴったりのように思いました。

3)  有名な諸作品(地獄門、考える人、バルザック記念像など)

映画の始めは、大きなアトリエの室内で、巨大な「地獄門」の制作に取りかかっているところでした。 これは「青銅時代」と言う作品で認められたロダンが、1880年に国から発注を受けた、装飾美術館を飾るためのモニュメントでした。それは、ダンテの「神曲」を原作とした作品で、ロダンは意気揚々と制作を始めたのですが、原典を超えて想が次々と広がり、変化して行って、結局完成を見る
ことが無かったと言います。

そして、遂に1888年、当美術館の建築計画は白紙に戻ってしまい、ロダンにも差止命令が出た由です。(因みに、同地の跡地には現オルセー美術館が建っていると聞きます。)

すると、ロダンは、この「地獄門」を自費で買い取り、生涯に亘って作り続け、結局未完に終わったという分けです。斯く、その言動は典型的な芸術家のものと言う感じがしましたね。

次に「考える人」について記します。
これは、「地獄の門」の上部中央に置かれる塑像として制作された由です。映画でもアトリエが映っていた当初から、この像が見えていました。 当初、
それは「詩人」と呼ばれていたと申します。

その姿は、地獄を見て思索している人を表し、後ほど、この像を鋳造した人が「考える人」と名付けたと言います。 それはロダン自身を表していると言われるようになりました。

映画の中では、ロダンの女性弟子の「カミーユ」が作品を見ながら、「人々は欲望に満ちていて反道徳的」と言うシーンがあります。 この人自身は優れた彫刻家であったようですが、やがて「ロダン」の愛人となり、諸々のトラブルの因となって行きます。 この場面には、そうした未来を暗示しているような所があり、彼女をめぐって本当の地獄が待ち受けている様な感がありました。

他方、バルザック記念像については、傑作な所がありました。その制作注文を受けたロダンは、自身の見方からか、背の低い、お腹の出っ張ったバルザック像を造ります。 それは裸身像で、何と睾丸までが表示されていました。 モデルは、大きなお腹をした妊婦でした。 この映画では、このモデルと、一応出来たバルザック像を並べて写している所がありました。妊婦とバルザック像はそっくりでした。 特に、妊婦の子を宿した御腹と、バルザック像の太鼓腹は見事な合同を示していました。

されど、注文者の審査委員会のお偉方三人がやって来て、「睾丸など隠せ」と言います。 バルザックは相当前に故人になっているとは云え、当時のヨーロッパで間違いなく天才と言われた作家でしたので、ロダンが制作した像は、そのままではその名声を大いに損なうものだったのでしょう。

その後の映画を見続けていると、詰まるところ、それは体を大きな布で覆った像に変じたことが事が分かります。 この作品の描くとおりとすれば、ロダンとは何かと物議を醸した芸術家であったことが分かります。

4) 至言を拾いますと・・・

ロダンの言動には、寸鉄人を刺す、それで本質を突いているところがありました。
例えば、芸術作品に完成があるのかとの問われると、「木を見よ。それは完成する事があるのか。」と答えています。 そう言えば、木々は成長しますが、一体いつ完成するなどと言えるのでしょう。
そして、ロダンはあるとき、「ミケランジェロの作品には完成が無いと言う。」と、のたまわっています。

また、芸術作品が理解されないことを嘆く声に対し、「ノートルダム大聖堂に置かれている彫像には、よく犬が小便を掛けている」と言っています。ロダンはそういうものだと達観していた様ですね。近代彫刻の祖といわれています。

 

 

 


この記事のコメント

  1. びっくり より:

    「木を見よ。それは完成する事があるのか?」

     すごい至言ですね。

     ろくに大きくなっていないのに、枯れそうになっていないかい? >> 自問自答 m(. .)m

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