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多くの言葉が話されるが、文字は作られにくく、伝わり易い

2018.09.03 Mon
文化

多くの言葉が話されるが、文字は作られにくく、伝わり易い

平成30年9月
仲津 真治

ジャレド・ダイアモンドという、生理学者、進化生物学者で、米ハーバード大学と英ケンブリッジ大学の博士号を持つ、大変な碩学が居ます。かなり年配で1937年ボストン生まれの由、その人の「銃、病原菌、鉄」と言う名著に、言語と文字を扱った章があります。 其処はわたしが日頃、関心を抱いていた分野ですので、その感想を兼ねつつ、簡単な一文を記します。

1)  この世には数千という沢山の言語が生まれ、今なお、その多くが使われていますが、それを記す文字となると、その発祥数乃至創造数は、極めて限られている由です。 現代に伝わり、なお使用実績がある文字となると、僅か数件に止まると申します。 この僅少の理由は、文字を作り出すには大変な努力や創意工夫を要したからの様です。 話し言葉と文字言語では、大違いなのです。さて、この文字の中で、発祥歴が明確なのは、まず、古へのメソポタミア地域で、往時のシュメール人が創出したと謂われる「楔形文字」でしょう。

その創出は約三千数百年前のことと言います。 そして、時が経って、約三千年前には、一の体系として仕上がりを見せた様です。

ここで、此の言葉や文字において、大事な発達を見せたことがあります。 それは、シュメール文字が、当初表意的な要素しか無く、「意味こそ大切、読み方自由」という段階から、表音の機能も持たせて、表音の使い方でも使い出したという事です。

こうした表音の機能でもシュメール文字が使えることを見いだしたシュメール人は、通常の名詞だけでなく、音節や語尾などにも、使い始め、一の文章や帳簿様式を生み出し、複雑な標記を可能にして行った由です。

斯くメソポタミアで創始・発達したシュメール人の文字、文化・蓄積は、
時代を経るに付けて、周辺に伝播し、古代エジプト、古代ギリシァ、古代ローマに継承され、ヒエログリフ、ギリシァ・アルファベット、ローマ字などへと発展、洗練されて参ります。

此処に、現代に繋がる一つの大きな流れ、文字の大河が出来ます。
即ち、表音文字のアルファベットです。

2)  ただ、此処に、幾つか他に生じた、文字の流れのことも触れておかねばなりません。

まず、新大陸の中米に誕生したマヤ文化が上げられます。
それは、旧大陸のシュメール文化などとは全く別に、無関係に成り立った文字文化の由です。紀元前六世紀頃のことと言います。しかし、地理的には南メキシコの地の由、されど、此の流れで今日に繋がるものは何一つありません。 マヤ文明は古代南米で突然生じ、天文などに優れた事績を残したものの、全体像は良く分からないまま、忽然と姿を消してしまったと聞きます。

なお、後年、南米の広大なペルーなどの地に登場したインカ文明は、15-16世紀に侵攻してきたスペインなどの勢力に圧倒され、滅びますが、文字を持った文化は生じませんでした。 インカは縄の結び目を使ったキープと言う通信手段を使用していたものの、文字までは生み出さなかったのです。

3)  もう一つに、アジアの地に生じたチャィナの文化・文明があります。
歴史を辿れば、紀元前約千三百年前頃、象形文字を中心に文字文化が
生まれました。 時代は春秋戦国の頃、中原の覇を争った国々で文字が
使われ始め、やがて秦王朝が統一致しました。 しかし、文字や度量衡を一の体系とした秦において、その文字を秦字と呼ぶ間もなく、王朝は交替、やがて前後合わせて約四百年も続いた漢王朝の偉力が「漢字」を誕生させました。

この漢字は典型的な表意文字で、読み方は各地域、各王朝などで区々です。従って、漢族という民族が居るわけではなく、漢字という表意文字を、各民族が共通文字としていると考えるべきのようです。

この漢字はやがて周辺国にも普及、漢字文化圏が形成され、今日に及んで
おります。

ただ、その中で近年、ベトナム、韓国、朝鮮などは、漢字を通常使わず、漢字以外の文字を利用するようになっております。 また、日本では漢字の訓読みが広く普及する一方、仮名を創造し、文章は併用で、漢字仮名交じり文が通例となっています。 日本は漢字多用国なのです。

4)斯くて、古代に僅かに発祥した世界の文字文化は、現代に至ると、
伝播の偉力が普遍的となり、古代のオリジンから辿れば、今やアルファベットと漢字の二体系に収斂しつつある由です。 文字体系の創造は大変困難な仕事のようです。 なお、アラビア文字は、コ-ランに記されている文字が元になっている由です。


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