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森友学園問題のキーマンと疑惑の3日間

2017.03.10 Fri

大阪の森友学園への国有地払い下げ問題は、ますます奇怪な様相を呈してきました。学園の籠池(かごいけ)泰典理事長の言動は支離滅裂ですが、国有地の売却を決めた財務省の対応も奇怪です。この問題を所管する理財局の佐川宣寿(のぶひさ)局長は3日の参議院予算委員会で次のように答弁しています。「2012年の閣僚懇談会の申し合わせで、(政治家の不当な働きかけがあれば)記録を保存することになっていますが、不当な働きかけが一切なかったので、記録は保存されていません」

 この人は官僚としては優秀なのかもしれませんが、役者としては「折り紙付きの大根」です。何かを、そして誰かをかばおうとしていることが見え見えです。佐川局長はこれに先立つ、224日の衆議院予算委員会では次のように答弁しています。

福島伸享(のぶゆき)議員「このような異例中の異例のやり方で(国有地の処分を)やっている時の理財局長はどなたでしょうか?」

佐川理財局長「えーと、今、手もとに資料がございません。大至急、調べてきます。(質疑を中断)前々任者ということであれば、えーと、中原でございます」

福島議員「なんでそんなにとぼけるんですか。(平成)27年から28年、前任者の理財局長!」

佐川理財局長「27年の夏から28年の夏という意味で言えば、迫田でございます」

 自分の前任者の名前を出したくないので、「手もとに資料がない」と言う。中座して戻ってきたら、前々任者の名前を出す。森友学園への国有地処分を決めた時の理財局長の名前を何とかして隠そうとする。が、隠しきれなくなって、ついに苗字だけ出してしまった、ということです。本当に大根です。彼が必死になってかばおうとした迫田英典(さこた・ひでのり)氏とは、どのような人物なのか。

1959年、山口県生まれ。県立山口高校から東大法学部に進み、1982年に卒業して大蔵省に入省。竹下首相の秘書官補、金融庁信用機構室長、徳島県企画総括部長、東京国税局徴収部長、関東信越国税局長、主計局次長、財務省大臣官房総括審議官を経て、20157月に国有財産を管理する理財局長に就任。20166月、1年足らずで国税庁長官に就任しています。後輩が一所懸命、守ろうとするのもうなずける経歴です。

 228日のYAHOOニュースに掲載されたフリージャーナリスト、志葉玲(しば・れい)氏の記事「国有地8億円値引した迫田英典氏を国会に!」によれば、この迫田氏こそ、森友学園に国有地を8億円も値引きして売却した疑惑のキーマンです。志葉氏によれば、森友学園問題を解く鍵は201593日から5日までの3日間にある、といいます。

産経新聞の「安倍日誌」93日によると、安倍首相は午後217分から10分間、財務省の岡本薫明官房長と迫田英典理財局長に会いました。その翌4日、首相は国会で安保法制の法案審議が続いていたにもかかわらず、空路、大阪入りしました。大阪の読売テレビに出演し、海鮮料理店で食事をしています。翌々日の5日、安倍首相夫人の昭恵さんは森友学園が経営する塚本幼稚園で講演し、「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長を引き受けました。なるほど、いろいろなことを想像させる3日間です。

「昭恵夫人は籠池理事長に頼まれ、断りきれなくて『名誉校長』を引き受けた」といった報道もなされていますが、むしろ、その教育方針に賛同して積極的に引き受けたのではないか。夫の安倍首相も事情を承知したうえで同時期に大阪を訪れたのではないか。もしそうならば、この疑惑をめぐる様々なことが実にすっきりと見えてきます。

権勢のピークにある首相とその夫人が賛同する小学校の設立計画。ここで思い切った仕事をすれば、強く印象づけることができる――目端の利く官僚なら「勝負のとき」と考えるでしょう。あらゆる手段を駆使して便宜を図り、売却価格も隠す。仲介する政治家も「ここで貸しを作っておいて、損はない」と蠢く。与党自民党はそんな実情が明るみに出たのでは政権の屋台骨が揺らぎかねないので、国会への参考人招致を認めない・・・。実に分かりやすい構図です。ついでに、「次の首相をめざす政治家は悠々と高みの見物」という姿も見えてきます。

今、日本の国家財政は莫大な借金を抱えて火の車です。きるだけ支出を減らして、財政を立て直さなければなりません。国有財産も大切にして、次の世代に引き継がなければなりません。それが今を生きる私たちの責任です。ですが、森友学園問題に登場する面々には、そうした責任感はかけらもないようです。それどころか、疑惑のキーマンが国民から税金を取り立てる国税庁の長官としてふんぞり返っているとは・・・。

この問題は、特異な学校法人の風変りな理事長が引き起こした小さなスキャンダルではありません。安倍長期政権の下で政治家や官僚たちが何をしているのか。その陰で私たちの未来がどんな風に蝕まれているのか。それを端的に示す、極めて大きな問題です。

  

≪参考サイト、記事≫

◎「国有地8億円値引きした迫田英典氏を国会に!」の記事(YAHOOニュースのサイト)

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20170228-00068180/

◎フリージャーナリスト志葉玲氏のブログ

http://reishiva.exblog.jp/

◎迫田英典氏の略歴(ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%AB%E7%94%B0%E8%8B%B1%E5%85%B8

◎産経ニュース「安倍日誌」201593

http://www.sankei.com/politics/news/150904/plt1509040010-n1.html

◎同201594

http://www.sankei.com/politics/news/150905/plt1509050012-n1.html

◎朝日新聞(201738日)の2面記事「理事長ら招致、自民難渋」

◎サンデー毎日(2017319日号)の「森友学園と政・官 疑惑の闇」

 

≪写真説明とSource

◎記者団に囲まれる籠池泰典理事長(39日)(ハフィントン・ポストのサイトから)

http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/09/kagoike-moritomo_n_15257798.html

 


この記事のコメント

  1. 中北 宏八 より:

    まったくその通り。金子勝さんが「日本会議大疑獄」と名付けていますが、検察が動かざるをえないところまでメディアが頑張れれば良いのですが・・・

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