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29-24 中国の民主主義への移行は避けられない

2017.06.29 Thu
社会

中国の民主主義への移行は避けられない

平成29年(2017)6月
仲津 真治

最近、多摩大学大学院のフェローで中国人学者の「沈 才彬(しん・さいひん)」
氏の著作が、角川新書(日本語原題 「中国の越えがたい「9つの壁」」として
刊行されましたので、二度読みました。 昨年からの読了なのですが、外の本と
読み合わせしつつ、再度読みますと、あらためて本書がポイントをずばり突いて
いて、良く書けていますので、その印象をここに記すこととしたものです。

沈氏は、中国江蘇省の海門市の出身で、私と同じ1944年生まれの由です。
そして1981年、中国社会科学院修士課程を修え、同院講師の後、1984年から来日、
東大客員研究員、早大にも同様に在籍、また、中国社会科学院助教授に在職の後、
再度来日、一橋大学などの客員研究員を経て、2008年多摩大学に移籍し、
同大学院教授となり、2015年から現職とのことです。

氏は本書を日本語で書き切った様ですが、その見解になる九つの壁は明確に記
されています。順次示しますと、章別に、中所得国の罠と言う壁、アメリカとい
う壁、南シナ海という壁、TPPと言う壁、AIIBと言う壁、人民元という壁、北朝鮮
という壁、台湾という壁、日中関係という壁、そして、おわりに、「民主主義へ
の移行は避けて通れない壁」として締めくくっています。

九つの壁としつつも、結局終章を設けて、「中国の最大の弱点は、他国が共有
することのできない共産党一党支配という価値観にある。」としています。
従って、結局、全部で十の壁という事になります。

そして、其処では、御本人自身が共産党統治下の中国の人であるにも関わらず、
遠慮せずに正面から、「最大の壁は「中国共産党」と言ってもいいかもしれな
い。」と言い切っているのです。

この種のテーマとなると、学者も研究者も政治家もマスコミの人も、また行政官
の人も、いろいろ配慮することがありますようで、言う事が随分不鮮明となり、
謂わば遠慮がちとなります。まして、国籍や立場、所属などにも影響されがちと
なります。しかし、原書者の沈氏は、その点極めてクリアで、

「まずは、共産党一党支配は永続しないと言う事だ。 世界的に見ても、一党
支配は永続する国はなく、中国も例外でないはずだ。」と

しています。これは、大変注目されて良いことと考えます。
ここには、自由のある日本社会の良いところが、よく現れており、
それが享受されています。

同時に氏は、「共産党一党支配体制から民主主義体制への移行には
時間がかかる。」とし、「10年、20年もしくは30年といった相当長い時間がかか
ると思っていい。」と付言しています。

旧ソ連が実質崩壊して約三十年、そのトップで数えて五代目で終焉を見た
旧ソ連、現国家主席習近平も中共体制で五代目であり、香港の一国二制度の
不調振り、ノーベル平和賞の魏ぎょう波を巡る最近の動きなどに象徴されるように、
諸々の事が注目を浴びています。

ともども、この時代に生を受け、生けとし生きる者として、かかる著者の主張に
耳を傾けつつ、しっかりと関心を持つべきと思います。


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