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大胆な近未来構想で閉塞突破を

2016.02.20 Sat
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[逆植民地計画]

一見ウケねらいの通俗本のように見える『日本逆植民地計画』(小学館)という本が出ました。著者の橋爪大三郎さんは、本来堅実な社会学者ですが、最近では『ふしぎなキリスト教』(大澤真幸さんとの共著)で新書大賞を取るなど、一般読者を引きつける本をいろいろ出しています。そのスタイルは、橋爪さんの師である小室直樹さん(故人)を彷彿させます。

さて、『日本逆植民地計画』で打ち出されているアイデアのことを荒唐無稽だ、陳腐だと否定するのは簡単ですが、私はこの本を出した意気には共感します。今、人口減、高齢化、高成長の終焉などの様相により日本社会の閉塞感が強まっています。橋爪さんはそこで、今こそ近未来のビジョンを柔軟な発想で大胆に描くことが必要なのではないかと訴えているのです。その精神に共感します。

同書の目次を見ると次のような8つの提案が載っています。
第1章 ダブル首都
第2章 百年マンション
第3章 太陽熱発電   ※太陽光発電ではない
第4章 どこでもトーク  ※自動通訳
第5章 無人自動車
第6章 潜水商船隊
第7章 新食糧
第8章 日本逆植民地計画

本のタイトルは、このうちの第8章から取っています。逆植民地とは、日本の中の一定地域を特区として、外国、特に発展途上国の「植民地」として開放するという大胆な発想です。ただし、ここではその内容には踏み込みません。

[ギガビット社会と現実化のジレンマ]

ふと思い出すのは、インターネットが本格的に登場した頃に月尾嘉男さん(当時東大教授)が提唱していた「ギガビット社会」という言葉です。アメリカの軍事技術から民生分野へと横展開して発展しつつあったインターネット。それが日本にも入ってきて、1995年頃に商用プロバイダーが登場、一気に普及の期待が高まりました。しかし、現実には回線が低速で利用コストも高いということから、すぐにできることには限りがありました。現在ではギガビットレベルの速度は個々の家庭のネット環境としてもあたりまえのことですが、当時は56キロビット/秒というような、メガにさえ達してない速度で、しかも固定料金ではなく従量料金だったわけです。ですから、ホームページなどはいかに軽いものを作るか、メールも画像を入れるなどということはとんでもないことで、それどころか、署名欄は最小限の行数にせよといった「心得」が流布していたものです。

思えば当然のことかもしれませんが、高度で安価な技術が行き渡った現在よりも、新しい技術が登場してまだ現実感が身についてなかった当時の方が、ネットの活用に関する「夢」や「ビジョン」が、自由に語られていました。月尾さんの「ギガビット社会」はその代表例です。

たとえば、奥出直人さん(当時慶大助教授)らは、ギガ級の通信速度になったら、遠隔地のオフィスの様子を壁一面に映し出して、お互いにすぐ隣の席にいるような感覚を実現できるなどといった、既成概念にとらわれないアイデアを出していました。巨大画面に分子レベルのミクロの世界を映し出せることがもたらす可能性なども語られていました。

巨大画面は映画館やビルの壁などでは見ますが、身近な場ではむしろ画面はどんどん小さくなって、電車の中では大半の人がスマホの小さな画面を見つめるといった光景になっています。確かにスマホという小さな端末を通して膨大な情報とつながっているイメージにはなったのですが、スマホ、モバイルというワクを越えた夢はあまり語られなくなったように思います。極端に言えば、現実化した技術の制約の中でのみ用途が開発されているという感があります。

[斬新な近未来構想を]

いま、新たな夢を語る時期が来ています。インターネットの発展段階としてはIoT(Internet of Things)が上げられますが、そのインフラの上には、たとえば、ロボットの第3次ブームの到来があり、AIの発展への期待が膨らみます。また、応用例として自動運転車も大きな話題となっています。そのほか、再生可能エネルギーなどさまざまな分野で新しい技術が胎動しています。

第1次のロボットブームは、1980年代、生産工場の中で人間のかわりに働く産業ロボットの普及でした。第2次はソニーのAIBOやホンダのアシモのようにペットや人間に模したものが発展しかけたものの、リーマンショックにぶつかって沈滞してしまいました。今次は、歩行支援ロボットのHALのような筋肉パワー系と、ネットと結んだりAIを装備したロボットが人間とコミュニケーションをとるようなものが多数出始めています。そのAIですが、かつてのAIは大量の情報・知識をあらかじめ教え込んでおくというアプローチだったので限度がありましたが、最新のAIは、ディープラーニングという発想で、AI自ら試行錯誤によりだんだん学んでいくという原理を採用しています。たとえば、国立情報学研究所では、2021年にAIで東大に合格することをめざしたプロジェクトが進行しています。20160127iPhone 049

技術がバラ色の社会をもたらすというような無邪気な技術史観は問題外ですが、近未来の日本社会を、新しい技術を念頭に斬新な発想で構想する気概をぜひ持ちたいものです。


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