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もう本屋には行かない?!

2016.03.19 Sat
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もう本屋に行くのはやめよう、と時々心に決めることがあります。

本屋に行くと、当然ながら本との出会いがあります。出会うと欲しくなります。「うーん、でも買ってもツンドクに加わるだけかもなあ」などと考えて躊躇します。でも、やっぱり買ってしまうのです。だから、ツンドクを増やさない最良の方法は本屋に行かないことです。amazonものぞいてはいけません。

しかし、最近(実はだいぶ前からですが)わかったのです。私は本を読むのが好きなのではなく、本を買うのが好きなのだと。はしがきを読んで、あとがきを読んで、本文をパラパラとめくって拾い読みして・・・買おうかどうしようかと迷ったあげくに、「えいっ」と決めてレジに持って行く・・・この一連の逡巡プロセスの快感。このわくわくする快感のために本屋に行くのですね。

本屋に行くことと、買うこと、そして、本棚の本を並べ替えること・・・つまり本を読む以外のことがすべて好きだとわかりました。だから、本屋に行くのをやめようと決めても、喫煙者の禁煙よりも長続きしないのです。(本を読むこともそこそこ好きですよ。一応付け加えておきます。)

そんなわけで、本屋が消えてしまうのは本当に困ります。私の住んでいる町でも、どんどん本屋が廃業しています。帰宅の途中で寄る小さな本屋がなくなるのは本当に寂しいです。たとえ特徴のない本屋でも、コンビニよりはましです。

◇書店減少と大型化が同時進行

統計を見ると、確かに全国の書店数は確かに毎年減っています。ただ、売り場面積の合計はほぼ横ばいで減ってないのです。これは、書店の大型化が進んでいるということです。出版や書店の動向に詳しい林智彦さん(朝日新聞社デジタル本部)がそのデータを紹介しています。

http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35078425/

大型書店が充実することはうれしいのですが、私は都心の大型書店だけでなく、住んでいる町の小さな書店も共にほしいのです。大型書店では、広い店内をまんべんなくまわろうという欲求はあまりなく、自分が大事にしているジャンルの棚をつぶさにながめると充実感があります。しかし、大型書店に始終は行けないので、日常的にふらっと立ち寄る本屋が身近にないと、本との出会いの機会が減ってしまいます。

◇アメリカでは書店復活の傾向

アメリカでは、書店大手のボーダーズが倒産したり、バーンズ・アンド・ノーブルがずいぶん店を閉めているというような情報が伝わってきています。林智彦さんによると、アメリカでは書店大手の動向とは対照的に、最近、中小書店を中心に書店が増えて「書店復活」とも言える、日本とは逆の動きが起きているそうです。「米国小売書店協会の統計によると、5年前には1,660ヵ所に1,400店舗しかなかったメンバー書店数が、2015年には2,227ヵ所、1,712店舗に増え」ているとあります。(米国小売書店協会(American Booksellers Association: ABA)調べ)

その要因を林さんは、地元密着の特徴の明確化、リアル書店ならではのイベント開催などのコミュニティセンター化、オリジナルグッズ販売などによるブランディング、店のウェブの充実などを書店活性化要因としてあげています。

◇書店も音楽CDショップの道を追うのか

一方、アメリカでは、スマホや読書端末などで読む電子出版の市場が順調に伸びています。(Author Earnings調べ)日本では漫画の分野が先行していますが、低落傾向が止まらない雑誌分野の電子雑誌への転換がこのところ目立ってきています。新刊書籍を紙と電子の両建てで出すケースも増えてきました。

今後、電子出版(書籍・雑誌)はいっそう拡大していくと思われますが、だからといって紙の本がすべて電子出版に置き換わるというような論は最近影をひそめてきました。紙の本という確立した文化的価値は他のメディアでは得がたい面があります。

そういう時代の本屋はどうなるのでしょう。特に町の中小書店の役割とは?

そんなことをいろいろと考えさせられる昨今ですが、私の自宅から徒歩圏のところに先日、なんと新しい本屋がオープンして喜んでいます。池袋西武の中にあったリブロポートという大型書店が最近閉店しましたが、そこで働いていた人が開いた「タイトル」という店です。店主の選んだ本が落ち着いたたたずまいで並んでいます。店主の感覚で選書と棚編集がされている個性派の本屋でありながら、特別とがっているわけではないので気軽に入れます。著者トークや企画展示などのイベントも積極的にやっていくようです。

http://www.title-books.com/

おそらく、関心テーマに合った本を探したり、書名のわかっている本を検索する場合はamazonのようなネット書店とか広域エリアから人が集まる大書店が担っていくのでしょう。それに対して町の本屋は、限られた空間の中で工夫して、来店客が未知の本と出会える場を店主のセンスで演出していくのでしょう。町の本屋で、おそらく日頃はあまり本屋に来たことのない人が「〇〇という本はありますか?」と店員に尋ねる光景を見ることがありますが、一部のベストセラーは別として、めったにあるはずがないのです。町の中小書店は、そのような目的買いをする場ではなく、目的なく立ち寄ったときに、「オッ」とか「へえ」とか思わず声を出したくなる本との出会いの場なのです。ですから、その出会いを取り持つ店主の役割が重要です。個性ある本屋が増えれば、それぞれの店で違う出会いが得られる楽しみが増えるでしょう。

音楽の分野では、曲の流通はネットが中心となり、CDが売れなくなってしまい、演奏家や歌手はライブやコンサートを収入源として重視するようになってきました。かつて、コンサートはCDを売るためのプロモーションイベントだと言われたこともあったのに様変わりです。

本の世界でも、著者が音楽家と同様、ナマの講演やトークでかせぐという現象は増えていくものと思われます。しかし、おそらく本の場合は音楽分野とは異なって、本屋はなくならず、新しい形に生まれ変わって根強く生きていくものと私は見ています。そうなれば、私にとっても、本と出会い、買うか買うまいか迷う喜びを得る場は失わないですむということになります。


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