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大画面の時代が来る?! VRが新聞を救うか・・・

2016.07.29 Fri
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◎Wired初代編集長だったケリーさんも見通せなかったこと

『<インターネット>の次に来るもの』(NHK出版 2016年7月刊)が出ました。著者は、インターネット草創期に一世を風靡した雑誌Wiredの編集長だったケヴィン・ケリーさん。訳者は朝日新聞ジャーナリスト学校の服部桂さん。服部さんは新聞記者としてはかなり早くからインターネットに注目していた人で、朝日パソコン副編集長の頃だったか、私は何かの折りに知り合いました。

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まだ走り読み段階ですが、「そうだよね!」と思わず目が止まったところがありました。読書端末について「スマートフォン」が最も意外だったというのです。多くの評論家はこんな小さいチカチカするスクリーンで本を読みたい人などいないと言っていたのに、ケリーさん自身を含む多くの人がいまやスマホで本を読むようになってしまったと。私自身はといえば、当時、小さな端末の登場までは予想しましたが、その画面を指でこすって拡大表示したりして本を読むことなどまったく考えもしませんでした。つまりスマホは想像を超えていました。しかし、Wired編集長だったケリーさんにして、すべて見通していたわけではないことに私は親しみを覚えました。

◎大きなディスプレイ

そんなケリーさんは本当は大きなページの本が好きなのだそうです。新聞紙くらいの大きさの電子本端末ということを言っていて、しかもそれが折りたためるとよいというのです。なんとうれしいことを言ってくれるのでしょう。私は1984年に「マルチメディア新聞」という、新聞紙面大のディスプレイに紙面そのままを表示して、各記事がさまざまなサブメディアやコンテンツにリンクしているというイメージを提起しました。ケリーさんの発想と近いものがあります。

◎マルチメディア新聞構想

私のマルチメディア新聞論は週刊ダイヤモンドの1994年10月8日号の巻頭に掲載されました。いまも続いている「ダイヤモンドレポート」というページです。一般読者向けに3ページ分の原稿を書くのはけっこう難儀して、最初の原稿は編集者に全面的な書き換えを要請されました。

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「いわば新聞のひとつひとつの記事が、 さまざまなメデイアのさまざまな世界に歩み入っていくための目次となり、入り口となる。 編集された=他人の用意したフレームの中だけにとどまっていたくない人にとっては、 新聞の紙面が次の世界に進んでいくための基地となる。 目次やインデックスというと普通は無味乾燥だが、 新聞の紙面なら、 実に味のあるインデックスとなりうる。」(本文から)

◎オンデマンドはつらいよ

私の発想の基本に、個人の要求に従ったオンデマンド思想に対する抵抗がありました。個人は、自分にとっての得意分野以外については、これが欲しいと明示的に言うのは苦手です。早い話が、いまポケモンGOにはまっている人たちに、まだサービスイメージも発表されてない頃にアンケート調査で何が欲しいかを聞いたとして、今のようなサービスをずばり言えた人がどれだけいるでしょうか?

◎新聞紙面という文化

「オンデマンドなんて言わないでまず提示してみてよ」というのが基本ではないでしょうか?日本で150年の歴史を持つ新聞紙面というのはそういう考え方を体現している貴重な文化です。新聞の編集者が、トップにはこれを持ってこようとか、その横にはこれだとか、大小を付けて割り付けた紙面を読者は第一提示として受け止めて、どうしてこの記事の扱いは小さいのか?などと疑問を発したりすることもできます。個人の欲求に従ってつくるオンデマンド新聞というのがかつて夢見られましたが、その考え方は「オンデマンドのパラドックス」に陥ると私は指摘しました。(もちろん、たとえば日経電子版のMy Newsのように、一定のキーワードを登録しておくと関連の記事を取り出しておいてくれるようなオンデマンドサービスは有用です。)

◎紙面ビューアが電子新聞の定番に

かつて朝のテレビに「やじうま新聞」という長寿コーナーがあり、現在もテレビで新聞紙面はよく使われます。つまり本質的に新聞紙面は、素材はリニアな文章ですが、面としてつくられているものです。テレビは絵になるものが好きですから。そして、いま新聞の電子版の多くは、紙面そのままのイメージを見せる「紙面ビューア」を用意しています。web上のリニアな順列表示的な編集だけでは飽き足らない読者が多いようで、うれしくなります。ただ、私が想定したようなリンク構造になっている記事は例外的ですが。

◎あらためて大きなディスプレイを!

スマホの画面の紙面を指でこすって拡大して見るというのは確かにすばらしいですし、私自身電車の中などではスマホで新聞を読んでいます。しかし、いま改めて、大きなディスプレイというのもいいなあと思うのです。ケリーさんの言うように、折りたためればいいディスプレイの登場を期待します。私自身は三面鏡型というのを考えたことがありました。

実のところ、これから有望なのはVR(バーチャルリアリティ)による大画面表示ではないでしょうか。スマホやウェアラブル端末などを使って、新聞サイトの「紙面」メニューをクリックすると、眼前に大きな新聞紙面が広がるというイメージです。つまりバーチャル大画面です。すでに登場しているツールだと、簡易なミニプロジェクターで壁などに映すという方法もあります。

大きな画面の方が視野や思考も広がると思いませんか?さて、どこが最初にやるか。

[参考]

日本発 ユーザー志向のマルチメディア構想の全貌(「週刊ダイヤモンド」1994年10月8日号)


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