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親子でパラリンピックを哲学する3本の映画

2016.09.23 Fri
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パラリンピックが面白い!ひょっとしたらオリンピックより面白い!
そう思っている人は私だけではないでしょう。

以前なら「感動ポルノ」と批判されるごとく「かわいそう」「不自由なのにすごい」という感情に左右されていたかもしれません。正直言えば、私も、派手なオリンピックの前にパラリンピックを開催した方がいいのではと思っていました。

しかし今は、ちょっと違います。面白い。ただ見ていて面白いのです。

 

■パラリンピックを見て哲学する

例えば、見事、銅メダルを獲得した車いすラグビー(ウィルチェアラグビー)。通常のラグビーですと、体格差のある日本人が不利なこともあるでしょう。しかし「車いす」さばきに長けた日本チームが善戦できることは、今回のパラリンピックで証明されました。

一社)日本ウィルチェアーラグビー協会
http://jwrugby.com/

 

「道具」が体格差を緩和することに加えて、障がいの度合いが重い選手と軽い選手を組み合わせるというルールがゲームを面白いものにしています。エース級の選手だけでは勝てない仕組みなのです。カナダでは女子選手が登用されていたように、むしろ障がいが重く体力が限られた選手の活躍こそが勝利への道なのです。

オリンピックは、どうしてもスポーツ界のエリートたちを勢揃いさせてギリギリの「勝ち残り戦」になりがちです。一方、パラリンピックは、どうやって様々な障がいを持つアスリートが一緒に協力して競技ができるかの「活かし残し戦」にも見えるのです。こうしたフェアに競えるゲームやルールを考え改良してきた人たちはつくづく偉い!深い敬意を表します。

試合中に転倒した敵の車いすを起こし合い、試合の後に互いに励まし合う姿も自然です。むしろ、パラリンピックの方が、本来のオリンピック精神に近いとさえ感じます。ビジネスや国家間疑似戦争の匂いがあまり感じられないからでしょうか。

こうして、気がつけば色々と「哲学」してしまうのがパラリンピック。ふだんは考えてもいないことを、選手を応援しながら考えさせられるのです。

突き詰めれば「健常者と呼ばれる人は、本当に健常なのか?」「健常者を標準とする社会は、本当に健全なのか?」という疑問が、パラリンピックのアスリートの姿に重なって浮かんでくるのです。

 

■パラリンピックと一緒に映画3作を見て哲学する

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こうして、いつになくパラリンピックを心から楽しみつつ、いつの間にかあれこれ深く考えている私です。ひょっとしたら、開会前に観た3本の映画の影響も大きいのかもしれません。

その3作品は、特にパラリンピックを意識して観たわけではありません。私は、毎週数本の映画DVDをレンタルして楽しんでいます。なぜか、いきつけのTSUTAYA旗の台店で、偶然この3作が相次いで飛び込んできたのです。

 

1.ガタカ(Gattaca)1997年 米国作品
http://amzn.to/2cA68w9

これは、それこそ十年後にでも起こりそうな恐ろしい近未来を描いたSF映画です。能力や気質はもちろん、いつどんな病気をするかまで、遺伝子を完全に解読できるようになった世界。そこでは、完璧な遺伝子を持つ精子と卵子だけを人工受精して出産するのが当たり前になっています。

これまでの人類が繰返してきたような、人種や宗教による差別はありません。その代わり、完璧な遺伝子を持つ人工受精で生まれた人類と、自然に生まれた人類とで、新たな差別が生まれ、就職も待遇も天と地ほどの違うのです。

この映画を観た後、あなたはどう感じるでしょう?

自分はどちらの種族に生まれたいですか?
子供をつくるとしたら、どちらの方法を選びますか?

 

2.エレファントマン(The Elephant Man)1980年 英米合作品
http://amzn.to/2cA6QJM

1公開時、衝撃的な映像により全世界で話題になった映画です。しかし、私が通うTSUTAYA旗の台店に入荷したのは、最近のことでした。

かつては見世物にされていた英語圏ではフリークスと呼ばれる奇形や異形の人たち。エレファントマンと呼ばれた実在の主人公、ジョゼフ・メリックもその一人です。この実話に基づく哀しい映画では、見かけだけで人を人とも思わない多くの人たちが描かれています。

しかし、エレファントマンことメリックは、絶望的な境遇にあっても、心は優しく、美と芸術を愛し続けるのです。

さて、あなたはどちらでしょうか?

見かけにとらわれず、心美しき人を愛する人
見かけで人をあざ笑い、自らの心を濁らす人

 

3.フォレストガンプ/一期一会(Forrest Gump) 1994年 米国作品
http://amzn.to/2cA7sPJ

名優トム・ハンクスが、アカデミー主演男優賞を受賞した出世作。映画好きならマイベスト10に入れる人も多いのではないでしょうか?

足には義足、知能指数も人より低い「うすのろ(=Gump)フォレスト」の波瀾万丈の人生を綴った映画です。残念ながら、幼少期から青年期にかけて多くの男女の残酷さは万国共通。フォレストはいじめられて育つのですが、人並み外れた純真さと鈍感力によって、誰よりも真っすぐに育ちます。

そして、普通の人ではとても味わうことのできない面白おかしく素晴らしい人生を送ります。(ただし本人はそう思わず、いつでも一所懸命)

あなたはこの映画を見て泣き笑いしましたか?

なぜ泣きたくなったのでしょう?
なぜ笑いたくなったのでしょう?

 

■「違う」は「異常」の心から、「違う」が「正常」の心へ

私も含めて、自分とは「違う」人たちを無意識のうちに警戒する人は多いでしょう。時に潜在的な脅威をおぼえることさえあるはずです。

その恐怖心の裏返しでしょうか?時に「違う」人を差別し、嘲笑し、排斥して、何とか心のバランスを取ろうとします。自分と同種以外は「異常」扱いしたくなるのです。

しかし、パラリンピックを見れば、人種も違えば、体の機能も違う人だらけ。さらに違っているのは、日頃は「正常」だと思っている自分たちが「とてもできない技」を軽々とやり遂げてしまうこと。

車いすラグビーのメンバーや義足の陸上選手を応援している時の私の心を内観します。すると、それは、少年時代に一本足打法の王 貞治選手のホームランや、盲目のスティービー・ワンダーの歌声に感動した時と同じように思えます。

ひょっとしたら、若い頃なら、人とは「違う」人を上から目線で見下す「感動ポルノ」的な心が、少しはあったかもしれません。

しかし、私もこの30年来、新システム開発者として、絶滅危惧種の国産Tシャツメーカー経営者として、異端の教育者・著者として、人とは「違う」行動を笑われ続けて来ました。人と「違う」ことをしなくては生き延びることができなかったのです。崖っぷちだったので、どんなに笑われようと気に病む閑さえありませんでした。

だからでしょうか。「違う」ことこそ、がんばる人たちの「正常」な営みだと感じられるようになりました。

そんなこともあり、ようやく50歳を過ぎた今、パラリンピックをオリンピックより面白いと感じられるようになりました。そして、昔見て感動した3つの名画を久し振りに見返して、少しは製作者の想いがわかるようになれた気がします。

 

久米 信行(くめ のぶゆき)
https://www.facebook.com/nobukume


この記事のコメント

  1. 池田三和子 より:

    久米さま、
    私も今回のパラリンピックの放映、パラフォトによる写真をみて、パラスポーツのファンになりました。
    なんでファンなったかの気持ちが、久米さんの文章に現されていて、そうそう、そうなのよ。と。、
    パラスポーツの盛り上がりがが一過性のものにならないよう、私も周りのひとに、伝えることから始めようと思います。

  2. 久米 信行 より:

    池田さま うれしいコメントありがとうございます。スポーツに限らず、障がい者の方が創ったアートや手作り品も、あえて区別せずに、その美しさやぬくもりを感じ取った方が、お互いに幸せだと考えております。

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