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何かに怯えるような宏高代議士の目

2016.10.15 Sat

石原慎太郎・元東京都知事の三男、石原宏高(ひろたか)代議士とは一度だけ、一緒に食卓を囲んだことがあります。昔の取材ノートを繰ってみると、2006529日のパワーブレックファストの席でした。「忙しい人が昼もしくは夜に時間を取るのは難しい。朝なら集まりやすい」というので流行った朝の食事会でのことです。

 主賓は、来日したフィリピンのデヴェネシア下院議長。当時、私はアジア担当の論説委員をしており、フィリピンの政情に詳しいジャーナリスト、若宮清氏に誘われて参加したのでした。会場はデヴェネシア氏が滞在していたホテルニューオータニの一室。6人ほどでテーブルを囲んだ記憶があります。この朝食会に宏高代議士も同席していました。

 話題の中心はフィリピンの内政で、英語での懇談でした。宏高氏は政治家になる前、日本興業銀行のニューヨーク支店やバンコク支店で勤務していますので、英語での会話にも不自由しなかったはずですが、終始寡黙でほとんど発言しませんでした。食事の前後に記した取材メモにも「昭和39619日生まれ、41歳。東京3区選出の衆議院議員。石原慎太郎の3男坊」などの略歴以外、何も記述がありません。

 それでもこの会食のことを覚えていたのは、宏高代議士がずっとオドオドしていたからです。かすかながら、目には怯(おび)えのようなものがありました。気楽な朝食の席なのに、なんでそんな目をしているのか。当時は「父親の石原慎太郎氏が立ち上げた新銀行東京がらみで、苦労しているのかな」くらいに考えていました。けれども、最近明らかになった東京都をめぐる様々な疑惑を調べていくうちに、その怯えの一端が分かったような気がしました。彼が足を踏み入れた東京の闇はとてつもなく深く、暗いものだったのではないか。

 石原宏高代議士をめぐるスキャンダルで一番有名なのは「森伊蔵疑惑」です。彼は2005911日投開票の総選挙で初当選しました。その直後、914日の夜に銀座の老舗料亭、吉兆でその当選祝いの会が開かれました。呼びかけ人は、三重県の中堅ゼネコン水谷建設のオーナーで「平成の政商」として知られる水谷功氏です。祝いの会には宏高代議士に加えて父親の石原慎太郎氏も招かれ、富豪の糸山英太郎氏も同席しています。この時に鹿児島の芋焼酎「森伊蔵」の箱に詰めて2000万円の祝い金が手渡された、とされる疑惑です。これは資金を提供した関係者の間でゴタゴタがあって表面化したものの、証言が食い違ったこともあってうやむやのまま蓋をされてしまいました。

 宏高氏の選挙区は東京3区です。品川区と大田区の一部、小笠原諸島などが地盤で、昔ながらの町工場が多いところです。石原慎太郎都知事の主導で20054月に新銀行東京が設立されるや、宏高氏の選挙区にある中小企業からは融資の申し込みが殺到し、どさくさの中で詐欺師や暴力団関係者も新銀行東京の金に群がりました。森伊蔵の箱が手渡された頃、新銀行東京はすでに「金のむしり取り合戦の場」になっており、宏高氏は困惑と混乱の中にあったと思われます。

 宏高氏は「選挙が弱い」ことで知られています。そういう政治家には「折り目正しいスポンサー」は付かないものです。有象無象が集まってきます。宏高氏の選挙を支えたグループ、大手パチスロメーカー「ユニバーサルエンターテインメント(UE)」もそうしたスポンサーの一つです。2009年の総選挙で宏高氏が落選すると、UEは彼の妻が代表を務める会社に毎月100万円のコンサルタント料を払って、落選中の活動と生活を支えました。

UEの創業者、岡田和生氏は高額納税者日本一になったこともある大富豪です。日本国内でのビジネスに加えて、フィリピンで巨大なカジノリゾートの建設を進めており、石原慎太郎・宏高親子が20106月にマニラを訪問した際には、石原親子に先立ってマニラに入り、訪問の地ならしをしています。石原親子は日本でのカジノ解禁を熱心に唱えており、持ちつ持たれつの関係にあったことを示しています。

一ノ宮美成氏ら関西在住ジャーナリストの共著『2020年東京五輪の黒いカネ』によると、このフィリピンでのカジノリゾート計画をめぐって、UEの岡田氏はカジノライセンスの取得がらみで4000万ドルをフィリピンに送金し、そのうちの1000万ドル(約10億円)を日本に還流させたことが明らかになっています。そして、その金は日本での政界工作に使われ、一部は石原慎太郎氏に流れた疑いがある、というのです(p204)。与野党の政治家が「日本でのカジノ解禁」に熱を上げる裏ではそうした工作が行われており、石原親子もその渦にドップリと漬かっていたということです。

 築地市場の豊洲移転や東京五輪がらみの大規模な公共事業をめぐって、日本の政治家や企業が黒幕や暴力団まで巻き込んで、どのような利権争奪戦を繰り広げているのか。前掲書には、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長(旧皇族竹田家の出身)や皇族と旧皇族でつくる親睦団体「菊栄親睦会」の存在、この親睦会を支えるゼネコンの鹿島、日本生命、裏千家、和歌山県の世耕一族(世耕弘成参議院議員の一族)の思惑、彼らを取り巻く右翼団体の人脈も紹介されていて、その叙述は迫力満点です(p47)。

 東京都知事の交代によって、蓋をされていた「東京の闇」に少しずつ光が当てられ、患部の摘出が始まろうとしています。親の七光りを浴びて若くして代議士になった宏高氏は、当選した直後から、こうした東京の深い闇の中に叩き込まれ、身悶えしていたのではないか。怯えたようなあの目はその苦しみを映し出していた、と今にして思うのです。

  

≪参考文献&サイト≫

◎『2020年東京五輪の黒いカネ』(一ノ宮美成+グループ・K21、宝島社)

◎石原宏高代議士の公式サイト

http://www.ishihara-hirotaka.com/

◎ウィキペディア「水谷建設」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E8%B0%B7%E5%BB%BA%E8%A8%AD

◎ユニバーサルエンターテインメントの公式サイト

http://www.universal-777.com/corporate/

◎英紙フィナンシャル・タイムスの電子版記事「日本のパチンコ王がフィリピンでのカジノ建設に挑戦」(2016611日)

https://courrier.jp/news/archives/53985/

◎日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長のプロフィール(ウィキペディア)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E7%94%B0%E6%81%86%E5%92%8C

◎ウィキペディア「菊栄親睦会」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8A%E6%A0%84%E8%A6%AA%E7%9D%A6%E4%BC%9A

 

≪写真説明とSource

◎石原宏高代議士

http://www.t-hamano.com/cgi/topics2/topics.cgi

 


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