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世論調査やアンケート調査にだまされない法

2016.12.13 Tue
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◇集計しないアンケート

シンクタンクに勤めていた新人の頃、証券会社の営業マンの話を聞いたことがあります。支店で講演会を開いて来場者にアンケートに答えてもらっているとのことでした。まだパソコンなどない頃ですし、コンピュータの専門家もいない支店ですから、「集計がたいへんじゃないですか?」と尋ねました。もしかして「正ちゃんマーク」で手集計でやっているのかな?などと想像しました。すると「えっ、集計なんかしないよ」という回答が返ってきて、本当にびっくりしました。「株式投資に関心あり」に〇がついていたら、さっそく電話をして勧誘するのだというのです。そのためのアンケートだと・・・。

これは極端なケースですが、片や信頼性が疑われることがなかった世論調査が、アメリカ大統領選では世論の実態を表してなかったとしてさんざんな評判となりました。世論調査の回収率に着目すると、アメリカでも日本でもかつてに比べるとかなり落ちていて50~60%です。これではたとえ正しくサンプリングをしたとしても信頼度が落ちます。調査については、私自身かつて調査をする側だったので、いろいろと思い出すこと、あるいは思うことがあります。

◇調査員のアルバイト経験

学生の頃、私は世論調査や市場調査の調査員のアルバイトを何度かしました。

思い出すシーンがあります。確か共同通信の世論調査でした。指定された地域の10件か20件が指定されています。そのうちの1軒、仙台市郊外の家を訪問しました。対象者はダンプカーの運転手でした。面接調査ですから、対象者本人に会って質問をすることになります。玄関先でいろいろ質問していると、奥さんが何か用があるのか、中からしきりに話かけるのです。すると、回答者である夫は「ちょっと黙ってろ。いま調査してくれてるんだから!」と怒鳴ったのです。こちらこそ調査に応じてもらっているのにと、何だか恐縮するような気持ちでした。謝礼はボールペン1本というくらいでした。当時は、調査の回収率が80%位あったと思います。そんな時代のひとこまとして思い出します。

仙台市郊外の田園地帯を担当させられたことがありました。住居表示などなく、家と家が離れていて、なかなか指定された家が見つかりません。ある家に寄って、ここに行きたいのだけど、と道順を尋ねると、親切に教えてくれるのですが、市内では出会わない強い訛りのため、何を言っているのかわかりません。えっ?えっ?と何度聞き返してもわからないので、いいかげんに「わかりました」と答えて切り上げました。そして、えいやと方向を決めて歩き出したとたん、「そっちじゃないよー」と声をかけられて、話を理解してないことがバレバレになってしまいました。

調査でいい思いをした経験としては、相手の家の応接間に通されて紅茶やケーキをごちそうになったことがありました。Facebookでこの話を書いたところ、同じ経験をした人が複数コメントしてくれました。調査がやりやすい牧歌的な時代だったということでしょうか。

◇信頼できる調査とは

さて、さまざまな調査、すなわち、世論調査、市場調査、アンケート調査の結果を見るときに、いちばん判別しにくいのはその結果を信頼していいかどうかです。

ひとつにはサンプリングの問題があります。たとえば、インターネットを通じて行われる多くの調査は、住民基本台帳からランダムに抽出するというようなオーソドックスは方法ではなく、web上やメールなどで呼びかけて回答を募る方法が普通です。数を集めるためにポイントを付与するとか、抽選でプレゼントを提供するというような方法もよく見られます。このような調査は「代表性がない」という評価になります。どのような集団ないし階層を対象にして、その対象からランダムに選んだサンプルであるかという点で信頼が置けないということです。

企業が宣伝のためにインスタントに行う調査に比べれば、新聞社がやる世論調査はまともなサンプリングだと言えますが、近年は、住民基本台帳や選挙人名簿を閲覧するのが個人情報保護法以後制限されるようになり、またできるとしても多額の費用がかかることから、電話調査が普通になってきています。RDD法というのが代表的で、固定電話の番号をランダムに発生させて、所定の数が集まるまで自動的に電話をかけていきます。通じないとか調査拒否の場合は、次の候補にあたっていきます。この方法の最大の問題は固定電話に限っていることです。固定電話を持ってない人の増加、あるいは持っていても不在時間が長い人はつかまりにくいと言えます。かといって、携帯電話を対象にするのは居住地域がわからないといった問題があって踏み切れていません。

◇まともな調査の見分け方

もうひとつは質問のつくりかたの問題です。たとえば、甘いものを控えていると回答した人に、その理由をたずねる質問をつくったとします。以下のように選択肢を立てて、ひとつだけ選んでもらうことにします。

   1.健康のことを考えて    2.虫歯の予防のため   3.医師に言われたから

選択肢はお互いに独立である必要があります。1と2もやや独立性が疑われますが、特に問題なのは3です。3に一定の数の〇がつけられていても、その医師は健康の観点で助言したかもしれませんし、また虫歯の観点で助言したかもしれません。

そこで正しくは、

   1.糖尿病の予防など健康のため   2.虫歯の予防のため

といった同じ次元かつお互いに独立の選択肢を立て、別途「そう判断したのは何がきっかけですか?」と尋ねて、

   1.医師に言われた   2.家族に言われた   3.ネットや雑誌などの記事で読んだ

などといった選択肢を立てればいいのです。

アンケート調査は、どんなにいいかげんなものでも、回答者は〇をつけてくれます。しかし、それで結果が正しく読み取れるか、信頼できるかどうかというのはまったく別の問題です。きちんと代表性を考慮したサンプリングで、きちんとした概念整理のもと、仮説を立てたりした上で質問をつくっているかどうかということを見分けることが本来大事です。そのためには、結果を解説している記事だけでなく、調査方法や具体的な質問文を確認するというのがまずは有効です。それらが書いてないという記事は、それだけで信用できないと判断してよいでしょう。

◇[付記]長期時系列調査

本稿を発表したのちに、私のかつての後輩が、長く続けている調査の結果を出版したことを知りました。『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか? 』(東洋経済新報社、2016年10月刊)です。もともと社会学専攻の日戸浩之さんが中心になって野村総研が1997年に始めたもので、その後3年おきに実施しているものです。「生活者1万人調査」と題して、実直に訪問留め置き法の方法を守っています。そのうち、NHKの生活時間調査(1960年から5年おき)や日本人の意識調査(1973年から5年おき)、毎日新聞の読書世論調査(1947年から毎年)などと並ぶ長期時系列調査と位置づけられるのではないでしょうか。

 


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