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宇宙に由来する生命の謎・・・ダーウィンへの疑問

2017.05.01 Mon
文化

宇宙に由来する生命の謎・・・ダーウィンへの疑問

平成29(2017)年4月29日(土) 仲津 真治
NHK総合テレビの毎日曜日の人気番組「ダーウィンが来た」を良く見ます。その事
も在って、興味が募り、「生命は宇宙から来た」と言う新書版の翻訳物を、この
程手にして読みました。関心あって、神田の古本屋街で最近求めたものでして、
「積ん読く」の古い本を引っ張り出したわけでは在りませんが、ただ、正直気楽
に読み流せると思っていたところ、なかなか難解で、当人の知力や気力の衰えも
あり、やっとこの程読み終えたところです。

以下、素人理解ながら、視野が広くなった観がありますので、感想を記します。

内容は、チャールズ・ダーウィン(1809~1882)の進化論に対する相当厳しい批判
から成っています。

もっとも批判と云っても、本書から引用すると(27頁)、

「キリスト教の勢力の強い欧米では、現代の進化学説に反論を加えることは、
「生物は神が創りたもうた」とする聖書の教えに力を
貸すこととなり、せっかく築いた「科学的精神の勝利を損なうものとして、日本
で想像する以上の、厳しい攻撃を覚悟しなければ
ならないと申します。

でも、英国人のフレッド・ホイルとスリランカのチャンドラ・ウィッククラマジ
ンと言う二人の優れた天文学者が共著で出した本書は、聖書を支持・支援する立
場から書かれたのではありません。
では、その主旨は何なのでしょう。
1)  余りにスローな突然変異のペース

ここで素人理解ながら、ダーウィンの進化論の核心を記しますと、生物が自然や
環境への変化に適応しようとする中で、それに適したタイプを生じ、従来からの
タイプに対し優位を占め、やがて圧倒、取って代わると言う自然淘汰説にあった
と思います。

だが、この考え方には、当時から疑問が提示されていた由です。それらを紹介し
ながら、両著者が展開する主張のポイントは、この変化をもたらす主因である突
然変異(現代風に云えば、遺伝子のDNAが自身の複製を作る際に生じてしまうミス)
の割合が大変低い事にある由です。

それは僥倖を期待するようなものと云い、例えとして挙げられていたのは、生命
物質の中で枢要を為すヘモグロビンを例に取ると、その変異とは「猿がたまたま
タイプライターを打って、シェークスピアの戯曲を生み出す確率」しか起きない
程、至難の業と表現されていました。 このセリフは私が米国留学中に講義で聞
いたことがあり、英米で良く引用される例文の様ですが、「猿がたまたまそう言
う事を為してしまう確率は、一応計算が出来ても、ほぼ零であって」、実際上あ
り得ません。

かてて加えて、突然変異の大半は失敗作と云い、実際は劣等のものが出てくる場
合が多いようです。そこで、ダーウィン理論の信奉者は、突然変異の中で結構発
生する中立の突然変異が積み重なって有用なものが生じ、その中から進化が生ま
れるとの考え方を展開していると申します。

これに対し、この両著者は、「その累積が在ったとしても、その結果有用となる
突然変異の比率は極めて低く、」生物の変化の実際に比べ、余りにゆっくりであ
り、結構起きている進化の現実を到底説明できないとしています。

斯くて、やや過激な言い方ですが、両著者は「自然淘汰説に立つダーウィン理論」
を「地球を特別視する」ゆえ、まるで「現代の天動説」の様だとまで形容してい
ます。

2)   少ない化石

化石の少なさはダーウィン自身が認めている現実の由、地球での生物発生以来、
三十数億年もの歳月が経ち、その間、夥しい生物が発生・発達、そして死滅して
いる割には、見つかる化石が少ないと言う事です。取り分け、多種多様の生物が
大発生したカンブリア紀以降を見ても、現世まで約五億年程も経ちますので、も
っと化石が多く見つかっても良さそうなのに、案外少ないと言う訳です。
ただ、こうした、それやこれやの議論は定性的なレベルに止まっていますと、結
局は見解の相違と言う事になるでしょう。斯くて、この点、両著者は詰まるとこ
ろ数学的な解明によるしかないので、そうした詰めが行われた旨を語り、ダーウ
ィンの云う自然淘汰だけでは、現に地球で生じてきたように進化はとても無理と
云う事になってきている由です。

3)  三葉虫と言う異例をどう見るか?

約五億年前から六億年前の有名なカンブリア紀には、多種多様な生物の発生を見
ています。それはカンブリア大爆発と云われ、アノマロカリスやピカイアなどの
異形の生き物が良く知られていて、最近では人気者ゆえ「ぬいぐるみ」まで、博
物館の売店で売られています。

ところで、これらと並んで知名度が高いのが三葉虫です。この仲間もカンブリア
紀に初登場、一億年以上棲息していた様ですが、不思議なことに、それは何から
進化して三葉虫となり、そして何へ進化していったのか、実は良く分らないとミ
ステリーのような生き物の様なのです。つまり、ポツンとそれだけ在ると言う感
じの由です。

即ち、通常なら所謂「系統樹」が描かれ、その中にそれなりに位置づけられるの
ですが、三葉虫は進化の道筋が実は良く分らないと聞きました。ただ、これは三
葉虫が有名であるゆえの、素人の誤解かも知れませんので、その点は含んでおい
て下さい。
4)   系統樹は立派に描かれているが・・・。

生物の体系については、半世紀以上も前に高校の生物学で、小さい方から、種、
属、科、目、綱、門、界と習いましたが、今日では、ここに粘菌やウィルスなど
も加え、相応に位置づけを与えて生物と非生物の境界まで含んだ、分類学の大系
が出来ていると承知しております。更に近年は分子生物学の研究調査も進み、そ
の裏付けも得た、より詳細な分類体系が出来ていると聞きます。

そして、これをもとに、各々の進化の位置づけと流れが分るよう、所謂「系統樹」
が出来ています。斯くて上の方のトップには、発見地名を取って「クロマニヨン
人」と名付けられたホモ・サピエンス(現代人)が書かれています。

ところが、両著者の記すところによると、この系統樹には不正確なところが多々
あると申します。、本当は良く分からないから、まだ実線にせず、破線に留めて
おくか、或いは何も書かずに無記として置くべきところなのに、もっともらしく、
進化の系統が在るように実線が書かれ、また、その図の中に或る「種など」の名
前が書かれてあると言うのです。両著者曰く、「そこは最早、空想の世界であ
る」。

となると、そうしたものを元に、論争し、証拠や発見物を吟味していても、如何
なものかと思われますね。

このことは、この3月のピルトダウン事件の展示に続いて、学者の世界も容易でな
いなと思いました。其処は真理探究の場だけでない、いろいろ在るところの世界
のようです。
5)  生命のルーツは宇宙に広がり、運ばれる

自然淘汰説への疑問から、天文学者である両著者が取るようになっている立場は、
概ね次のようなもののようです。

まず、第一に、両著者はパンスペルミア説という宇宙生命論の考え方に立って居
ることです。それは、そもそも生命は宇宙に広く多く存在し、地球の生命の起源
も実は地球でなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が地球に到達したものに起
因するとする説です。

この考え方は、1903年にスエーデン人のアレニウスという学者が、
アインシュタインの特殊相対性理論(1905年発表)の二年前に打ち出したもので、
最初は余りにも突飛ゆえ、学界で相手にされなかっものの、次第に支持者が増え
て来ていると聞きます。両著者のひとり、フレッド・ホィールもその中に入いっ
ていて、1978年には、自身、「彗星が地球にぶつかるときに生命がもたらされて
きた」と主張しています。

話を戻して、アレニウス等に依れば、バクテリアと言い換えても良い「パンスペ
ルミア」と言う生共通命物質は、余りに微細なので、隕石に付着せずとも、それ
自体太陽を含む恒星からの光圧で宇宙空間を移動するとしています。ここに光圧
とは聞き慣れない言葉ですが、バクテリア程度の大きさなら、真空の空間で光を
受ければ、この光圧で充分に速く飛び、地球からアンドロメダ銀河くらいの距離
なら、十億年程度の時間で移動可能と計算されている由です。地球では、その
創成から生命発生まで約十億年懸かっていますから、大宇宙ではビッグバンから
約百三十八憶年も経っていますので、その間、充分いろんな事や移動が起こりう
ると言う訳です。

斯く、実に壮大で悠久なるお話しですが、こうした見方を支持する立場からは、
微生物が宇宙の極低温で凍結したまま生き残る確率が推定されていて、それ自体
かなり低いものの、液体空気のマイナス二百度で微生物が半年以上生存している
ことがアレニウスの例証実験で実証されていると申します。ここに、マイナス二
百度とは太陽系の最遠惑星である海王星の大気温と大体同じとの事です。

更に、極低温であれば、全ての化学反応が極めて緩慢になる事を考慮に入れると、
何もかもがゆっくり進むため、微生物の死滅まで三百万年を要するであろうとの
計算さえ在ると云われています。少しでも生きている間、その命は活動し、また
しうる余命があることでしょう。

ブラックホールの研究・観測さへ開かれつつある今日、大いなる進展を期待した
いものです。
そう言えば「たんぽぽ計画」なる研究調査プロジェクトが開始されている由、
それは「生命と有機化合物の惑星間移動の可能性」及び「地球の低軌道における
地球由来の粒子」を調査する宇宙生物学プロジェクトです。国際的な取り組みで
すが、日本のイニシァティブに依っています。

そして、色んな見解や主張があり、論争が続いている由です。
6 )  DNA は共通概念の由

地球由来の生命を論ずるなら、DNAが共通概念と言うのも分りますが、宇宙の他の
時空間なら違うタイプの生命体もあり得ると思ったら、それはどうやら同じよう
で、本書は何処でもDNA、RNA、遺伝子という用語を使っていました。これは、
宇宙全体に共通なものと理解されます。
7)   進化は斯くて今までの如く

斯く、パンスペルミアの考え方に依れば、命豊かな好環境の地球には、古来パン
スペルミアの生命体が降り注ぎ、生き残り、繁盛し、生命大国を築き挙げ、広が
って参りました。

自然淘汰説に見られたように、それだけが進化の動因ではないようです。それは
もっともらしいが、世界はもっと広く、大きく、躍動していると考えられます。

ダーウィンの進化論は基本において正しく、宗教的世界観や、そのドグマから人々
を解き放った功績が大なるものが有るものの、その実際の適用段階で困難を抱え
ていたと言うべきなのでしょう。

類例を挙げれば、コペルニクス的転回により、人類の宇宙観は一変しました。し
かし、それだけでは終演せず、その後ニュートン力学からアインシュタインの相
対性理論へと物理学は発展して参りました。

だが、其処においても、量子力学との不調和が専門家を悩ませている由。
斯くすると、生物学の分野でも、ダーウィンとパンスペルミア説などの統合・
次なる展開が予期されるところで
す。


この記事のコメント

  1. 矢野茂樹 より:

    拝見いたしました。私もあの番組は大好きです。
    関西会から。

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