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英国映画が描く「対独戦勝利の夜、王女姉妹は街に出た。」

2016.06.07 Tue
社会

英国映画「ロイヤル・ナイト」(原題 A Royal Night Out )は面白かった!

これは、この6月(平成28年 2016)、銀座外若干の場所でしか上映されていない映画ですが、関心があって鑑賞して参りました。実話に基づいている由、ただ、映画で展開する箇々の諸話や物語は、事実かファンタジーか定かでありません。 もっとも、このお話自体はかつて有名になったオードリー・ヘップバーン主演の映画「ローマの休日」のモデルになったらしいことが示唆されていました。ここで幾つか印象に残った事を記します。
1945年5月8日

事態は昭和20年(1945)の5月8日、第二次大戦のヨーロッパ戦線においてドイツが降伏した、その日に起きます。エリザベス王女(当時19歳 現女王 エリザベス二世 90歳)は妹のマーガレットとともに、 「外で勝利を祝いたいのです。今夜を逃したら、機会がありません。」と、強く両親(ジョージ六世夫妻)にうったえる所から始まります。当然、認められません。特に母エリザベス王妃からは「貴女はいずれ女王に成る身ですよ。」と厳しく諭されます。でも二人は頑張ります。

すると、勝利の国王演説の練習中であった父王(ジョージ六世) は「しょうがないな。」と言う感じで、「午前一時まで。」と渋々認めます。そして、護衛兼監視役に二人の将校を付けます。斯くて彼等がお供をする計四人の、お忍びのロンドン街往きが始まります。街は祖国の勝利で沸き反っていました。
父王「ジョージ六世」の練習風景と実況

因みに、宮殿内では、吃音で悩んでいた父王の練習風景が描かれていました。その練習スピーチは確かに滑らかに行かず、同じ所を三回言い直す所がありました。

しかし、別の所では、町中に出たエリザベス王妃が、酒場にてラジオで演説する父王の声を聴く場面が描かれていました。そこではそうしたことはありませんでした。色々在った後、帰城した娘から、その事を聞き及んで父王は喜んでいました。この方も人間ですね。
マーガレットの逃避とハップニングの連続

さて、バッキンガム宮殿を出た四人は、比較的近いリッツという五つ星のホテルに行きますが、勝利で盛り上がっている中、ここで、自由を満喫したいマーガレットが思い切った行動に出ます。監視の隙を狙って、エレベーターに乗り、何処かへ行ってしまったのです。エリザベスは焦って、妹を探し始めますが、簡単に見付かるはずもありません。ここから、映画は将にハップニングの連続です。それこそ面白い、ひやひやのシーンが続きますが、御関心の向きは是非自身で御鑑賞をと存じます。
トラファルガー広場に向かうバスの中

マーガレットが「バスでトラファルガー広場に行く」と行っていたので、エリザベスは同じ方向に行こうとします。そしてバスに乗りますと、女車掌がやってきます。でもエリザベスはお金を持っていません。「持ち合わせないが無い」旨を伝えると、「勝利の日だ。今日くらい良いだろう。」との声が回りから掛かります。女車掌は「駄目です。それに日本との戦争がまだ続いています。」と反論します。そう、ドイツとの戦争が終わっても、日本とはなお戦いの渦中なのでした。日本人としては「ぎくり」とさせられましたね。因みに、日本の降伏は三ヶ月後の八月でした。

さて、元に戻りますと、隣の席に居た青年が「僕が払うよ。」と親切にも建て替えてくれました。それにしても、お金も持たずに外出するとは驚きます。そもそも付き添いの将校がどう心得ていたのか、そこの委細も分かりません。

斯くて、ここから、彼との二人行きと遣り取りが始まります。彼は、英空軍の将校でした。ドイツへの空襲に五十回も参加した歴戦の勇士でしたが、ともに搭乗していた戦友を失ったためか、今次戦争には批判的な様子でした。因みに、戦争末期のこの頃には、英軍にも陸海軍とは別に空軍が既に編成されていたようです。それまでは陸軍の航空隊でした。
トラファルガー広場の喧噪

其処は勝利を祝う人々に満ちあふれ、沢山の英国国旗が振られていました、・・・・

夜のトラファルガー広場には夥しい人々が集まり、其処は将に喧噪に充ち満ちていました。沢山の英国国旗(ユニオン・ジャック)が振られており、それらは小旗で無く、結構大きいものでした。中には、星条旗(アメリカ合衆国国旗)もちらほら見かけました。連合国の主軸として大戦を勝利に導いた米国の貢献が意識されていたのでしょう。他の旗はありませんでした。
国歌と発音

どこからとも無く、英国国歌が唱われ、聞こえて来ました。良く聴くと、「God Save our Gracious King」と歌っていました。そう、国王はジョージ六世、往時はthe Kingであったのです。今は女王、エリザベス二世その人ですから、そこのところは「Queen」と歌います。

国歌を歌うシーンは、酒場、広場、トイレと三回出て来ましたが、その内の一回では「Save」を「サイヴ」と発音しているのが聞こえて来ました。これは、ロンドンの下町の英語の音と思われます。
これからの英国は大丈夫か?

道中、宮殿で国王夫妻が語り合う所があり、これはと思ったところがあります。国民向けラジオ演説を終えたジョージ六世が「戦争には何とか勝ったものの、これからの英国が心配だ。」と王妃に語りかけたのです。すると、エリザベス王妃は「大丈夫でしょう、チャーチルが居ますから。」と答えました。そして、王が「近く総選挙があるな。」と応じると、王妃は「チャーチルが勝つでしょう。」と返しました。こうした遣り取りが本当にあったのか良く分かりませんが、立憲君主制の下、斯く王室からも信頼されている時の英国政権と言うものが登場してくる場面なのでした。

だが、現実にはこれから間もなくあった英総選挙で、チャーチルの保守党は敗れ、アトリー党首の労働党に交代します。されどその場面は無く、従って、この事への国王夫婦やエリザベス王妃の反応までは、この映画では分かりません。
エリザベス王女自身の述懐

エリザベス王女は、サラ・ガドン(Sarah Gadon)というカナダ出身の女優が演じています。1987年生まれの、実に気品のある美人女優です。私は、少女時代のエリザベス二世の写真を見たことがありますが、このサラ・ガドンは確かに良く似ていて、その雰囲気を漂わせていました。

彼女が演じたエリザベス王女は、かの空軍士官に「想像してみて。一度だってひとりで外出したことのない生活を! でも今夜は普通の娘。人生で一番素敵な夜だった。」と語っています。脚本家の作でしょうが、良く錬られたせりふと思います。


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