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生命の星の条件を探る:私ども自身が居る地球や太陽系を再認識する

2018.04.03 Tue
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生命の星の条件を探る:私ども自身が居る地球や太陽系を再認識する

平成30年 2018   4月  仲津 真治

「生命の星の条件を探る」という、文藝春秋刊行の新著、「阿部豊」東大理学部准教授著の新著を何とか読み終えました。約二百四十頁の大部の著作で、各所で著者の探求の過程が反映されており、著者夫人の「阿部彩子」東大大気海洋研究所准教授が本著の末尾に記している、「この生命の星の諸条件を明らかに出来るはずとの信念」を「科学」に変えるための書となっています。 私ども素人向けの啓発書の観を呈していますが、専門家や研究者にうったえている感も随所に在りますね。

本書は、私ども自身と地球の自己認識に大いに資する観があります。

以下、難解なところが多々在りましたが、拙理解の中で、幾つか印象に残った点を中心に記します。

1) 「地球外生命」と言う、まともな科学者なら口にすることもはばかれたようなテーマが、真剣に議論される時代がやってきた由です。著者の専門は、「地球惑星システム科学」と総称されていて、地球物理学、地質学、鉱物学、地理学などの垣根を統合し、包括的に、この惑星のことを考えていこうと言う新しい学問と申します。

こうした道が拓けてきたのは、宇宙のデータが、特に分厚い地球大気の層を通さない、「ケプラー」と言う惑星探査機の観測成果として実に多く得られてきて、
沢山の太陽系外惑星が見つかり、また地球始め太陽系自身のことも随分分かってきたからと言います。

ここで基本に立ち返れば、生命の諸条件を探ると、地球自身も地ことも
良く知ることに繋がると言います。

著者は、命溢れる地球の事を多くの人が「奇跡の星」と呼ぶのを聞いて、その言い方に否定的でして、「幾つかの条件が整えば、地球と似たような環境が生じ、地球とは少し違うかも知れないが、生命の誕生・進化が起こり得る」と言う持論のようです。私も本書を読んで、アマチュアながら、かなり低い確率ながら広い宇宙の、長大な時間の中で、それは有り得るとの印象を持ちました。

斯くして、人類史とは、人間を特別視する世界観、人間観からの脱却の
歴史とする著者の見解に賛同するものです。

2) 水

著者が諸条件の第一に挙げているのは、まず、液体の水があることです。これは直感的に人々が同意できることでしょう。地球上の生命は、一生のうち、必ず水を必要とします。水が無くとも死なない生物は居ますが、増殖・繁殖はしません。

好例を挙げると、人類二度目の月着陸に成功したアポロ12号は、二年半前に月面に着陸していたサーベイヤー三号からカメラを回収し、そこに付着していた微生物を見つけました。無生物の月に持ち込まれ、水も大気もない月で生き残り、地球に持ち帰られたのです。大変な生命力を実感しますが、繁殖はしていませんでした。

斯く、同じ水でも、液体、即ち「水」であることが大切です。 固体つまり「氷」と言う氷結状態では困りますし、気体つまり「水蒸汽」では適しません。著者は端的に指摘しています。液体である水は循環に欠かせないのです。

即ち、固体では動きか遅すぎ、気体では将に「霞を食っては」生きて行けないのです。食には水溶液にして取り込むことが欠かせないのです。

しかも、この水は宇宙に「ありふれています」。沢山在るから、生物の基礎たり得るのです。何故、水が常温・常圧の下、液体であり、摂氏百度と言うかなり高温になるまで液体であるのか、その効用はなど、水の諸性質、その特性については、著者自身が分かり易く解説してますので、本書自体に当たって下さい。案外難しい問題のようです。

3) 大気と水蒸気など

地球のような惑星を、水が結構在るので、「水惑星」と言う由です。
そして、地球の大気には、長い地球史を辿って、「窒素、酸素、二酸化炭素、不活性気体など」の外、「水蒸気」が結構含まれています。

生命を誕生させ、繁殖させるには、水が欠かせません。

もし、この大気内の水蒸気を含む気体の分子活動が活発で、そのエネルギーが、惑星質量の小なるがゆえの弱い重力エネルギーを凌いでいるとしますと、大気は、その惑星表面に止まれず、消失してしまうでしょう。懸かることが起き
たのが、惑星では地球の約十分の一の火星です。斯くて、火星は長年月ののちに、大気と水を失ってしまって、今日のような状態にあるのです。

惑星ではありませんが、似たような事が起きたのが、地球の衛星である月でして、更に、その十分の一、つまり、地球からすると約百分の一の大きさで、大気も水もありません。

他方、地球とほぼ同じ大きさの金星は、大気を保持しています。だが、そのほとんどが実は二酸化炭素なのです。そのため、その強い温室効果がはたらき、金星の表面の温度は昼も夜も摂氏470度と、太陽により近い水星よりも高くなっています。その酷暑と、水の無い事が手伝って、金星には生物は存在しないとされています。

明けの明星、宵の明星と美しい名前で呼ばれる金星ですが、其処は命の無い世界と見られます。

幸い、地球には大気圏があり、保持され、形成されました。

4)  独立栄養生物と光合成

私どもヒトを含む動物は、高いエネルギーを持つ有機化合物を合成できません。このタイプを「従属栄養生物」と言います。他生物を摂取して栄養を得て、活動するのです。これが動物の食事の本質です。

これに対し、植物は光合成により、自分の体内でエネルギー源となる有機物を、光エネルギーを使って、合成できます。これを「独立栄養生物」と言います。これが成り立つようになって、単細胞生物を始原とするによる生物循環が始まりました。単細胞生物が生物の創始者のような観を呈し始めたのです。

ある種のバクテリアによる、光合成による有機物の製造が地球で先ず約二十億年続いたと申します。

この結果、光合成ゆえに、二酸化炭素が多く植物に取り込まれ、酸素がどんどん排出されるようになりました。炭素の酸素を介した循環が始動し、有機物の腐敗などの原因となって、もともと危険な元素である酸素を摂取し、そのエネルギーを用いる生物が現れてきました。その本質が燃焼である呼吸の登場です。その主体はずばり言えば動物です。斯くて、地球の大気は、もともとの無酸素から、酸素をかなり含むものへと大変化を遂げました。

5)危険だが、旨く活用すると有用となる酸素(酸化とは燃焼)には、恩恵がもうひとつあります:それはオゾン層の形成

大気に酸素が相当程度含まれると、地上から順に、生物が居て気象現象が生じる対流圏、成層圏、中間圏、高度約80km以上の熱圏とに分かれ、地球を覆います。そして、この成層圏と中間圏の間に、オゾン層が出来、紫外線を吸収、熱を帯びます。

このオゾン層、O3層が、紫外線吸収作用で、生物を守るようになったのです。酸素やオゾンの登場で、植物も動物も他の生物も進化の地平が一段と開けました。

6) リンの供給

私どもは海こそ命の母と教わってきました。 その文脈の中ですが、著者は、水惑星である地球に於いて、全世界の海が概ね繋がっているような海のウエイトの高い地形の下で、著者は生命の形成と繁栄には、希少性の高いリンが欠かせないと言います。

そして、このリンは、陸上では植物の根によって吸い上げられますが、対して海では魚介類が死ぬと、遺骸が海へ深く沈んで行ってしまう方向が主流のため、そのままでは多くリンが失われていきます。 其処で、ペルー沖など何カ所かにある深海からの海水の湧き上げ現象が効いてきます。ラニャーナやエルニーニョなどと呼ばれる現象の起きるペルー沖などが代表例ですね。 こうした海水が動く、自然の補完処置が機能しているところを見ると、自然の巧妙さや不可思議さに驚かされます。著者曰く、生命体の保持のため、リンは使い回されているのです。

7)大陸の役割

では、大陸に役割は無いのか、大きな疑問が沸いてきます。其処で、この著作をざっくりと読み込むと、火山から出る大量のガスが、其れを溶かし込んで雨となり、沢山降ると、今度はそれが炭酸カルシウムなどの炭酸塩となり、岩石の形成に資します。 これらが釣り合っていると、旨く、この循環に吸収されて気温は上がりませんが、もし火山ガスの出の方が多ければ、気温は上がり、計算に寄れば、摂氏六十度以上になると、推定される由です。

こうなると、温暖化どころでは無く、地球は巨木が生い茂った石炭紀を凌ぐ暑さになるでありましょう。 つまり、大陸の役割は、炭酸ガスや炭酸塩による循環の妙で、地球の自然を程々にしているようなのです。

斯くて、地球は数多の、種類豊富な生物繁茂の星となりました。
特に、そうした生物景観は約五億年前のカンフ゛リア紀に生じ、以降、
大いなる進化と生命大繁栄の場となっています。

8) 自転軸の傾き 公転軸と一致するとどうなるか

小生が作詞作曲した曲に、「四季はめぐる」と言うのがあります。
その歌詞の二番に、「太陽と地球とが仲良しで作り出す」という一節があります。

それは、地球の自転軸が、公転軸に対して23.5度傾いていることを指しており、それ故に豊かな四季が生じることを唄っているものです。

太陽系形成の頃、いろんな事象や衝突などで、今の地球の形、大きさ、
質量、月の形成と衛星化等が決まり、諸変化を経て、其処に居るとすると、今日の落ち着きと現状を今は良いなと思いますね。 もし仮に今が氷河期ならどうするか、全球凍結期なら全員死滅をどう受け容れるか、等など諸疑問が沸いてきます。

もし、仮に、拙問のようなこと、つまり、地球の自転軸が、太陽の周りを回る公転軸と同じだったら、どうなるか、それは有り得たケースの様ですが、南や北は常に寒く、赤道地帯の真上に太陽が常在、季節変化は何処も無くなりますね。四季が巡ってくることによる自然の豊かさと変化の多様さに私どもは慣れていますが、あらためて現地球の幸せさを噛みしめる感があります。十五年前の拙曲な
がら、著者の記述と合うことに納得します。


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