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ありがとう。せこい政治家、舛添要一さん

2016.09.16 Fri

中国の有名な故事に「人間万事、塞翁(さいおう)が馬」というのがあります。何が幸運をもたらし、何が災いを招くのか、人知の及ぶところではないという教えです。舛添要一・前都知事の政治資金のせこい使い方に端を発した東京都のスキャンダルは、舛添氏の辞任から都知事選、選挙での自民党の分裂と小池百合子氏の圧勝という結果をもたらしました。

その過程で、東京都を牛耳る「都議会のドン」内田茂都議の醜聞や内田氏と昵懇の間柄にある森喜朗・元首相の役割を炙り出し、2020年東京五輪をめぐる利権疑惑や豊洲新市場への移転をめぐる不可解な経緯が次々に暴露されるに至りました。すべては、政治資金を使って千葉・木更津の温泉リゾートに家族旅行に行くような「舛添氏のせこさ」が引き金になって表沙汰になったものです。納税者にとっては、まさに「万事、塞翁が馬」であり、ここは舛添氏に「ありがとう」と言ってもいい場面ではないでしょうか。

疑惑追及の焦点は、招致活動時の予算7300億円が2兆円を超えるまでに膨れ上がった東京五輪の開催準備費用と、首都圏の台所「築地市場」の豊洲移転問題の二つに絞られてきました。そして、築地市場の豊洲移転は環状2号線の建設工事と密接不可分の関係にあります。この道路は築地市場を貫いて造られ、東京五輪の選手村と主な競技場を結ぶ幹線道路になる予定で、なんとしても市場を豊洲に移転させなければならないのです。つまり、二つの疑惑は「東京五輪の開催準備」という問題に収斂していくのです。

週刊文春9月1日号によれば、環状2号線の「虎の門-豊洲間 5キロ」の総事業費は4000億円と推定され、1キロ800億円もの血税が投じられる超贅沢道路です。その工事を受注した中堅ゼネコンのナカノフドー建設(千代田区)や鹿島道路(文京区)はいずれも、内田茂都議が代表をつとめる政治資金団体に名誉会長が献金したり、幹部が内田氏の長女の結婚披露宴に出席したりする間柄、と報じられています。

利幅の大きい公共工事を受注し、そのおこぼれのような金を政治家に届ける。政治家はそうした金をかき集めて権勢を振るう。昔ながらの利権構造が日本の首都、東京に温存されていることに驚きます。移転先の豊洲新市場の土壌汚染対策をめぐる「盛り土騒動」の背後にも、似たような構図が見え隠れしています。

もとは東京ガスの製造工場跡地。そんな所に食品を扱う新市場を造るという構想そのものに無理があるのですが、ベンゼンなどの有害物質で汚染された土壌を削り取って盛り土をし、4.5メートルの厚さの土で封じ込める、というのが専門家会議の提言でした。が、専門家の見識など吹き飛ばされ、実際に工事をするゼネコン側の都合で設計図が引かれ、入札・落札されていった経過が徐々に明らかになりつつあります。

醜悪きわまりないのが石原慎太郎・元東京都知事の言動です。なされるべき盛り土がなされず、建物の下に「謎の地下空間」があることが判明すると、石原氏はテレビのインタビューに「私はだまされた。(盛り土を)したことにして予算措置をしていた。都の役人は腐敗している」とまくしたてました。

ところが、なんのことはない、石原氏本人が2008年5月10日の定例記者会見で「(盛り土より)もっと費用のかからない、効果の高い技術を模索したい」と口火を切り、「地下空間」づくりの地ならしをしていたことが分かりました。それどころか、石原氏は当時の東京都中央卸売市場の比留間(ひるま)英人・市場長に対して「こんな案(地下にコンクリートの箱を埋める案)がある。検討してみてくれ」と直接、指示していたことまで判明したのです(9月16日、東京新聞電子版)。

こうしたことが明るみに出るや、石原氏はさらに「私は素人だからね。全部、下(都の職員)や専門家に任せていた。建築のいろはも知らないのに、そんなことを思い付くわけがない」と釈明し、「東京は伏魔殿だ」と言い放ちました。何という品性の持ち主であることか。東京都知事として13年間も、自らが伏魔殿の主であったことをすっかり忘れてしまったようです。この破廉恥さに比べれば、舛添氏の振る舞いなど、かわいらしく見えてきます。

人間万事、塞翁が馬。この際、日本の首相や東京都の知事として権力を振るった政治家たちがどのような品性の持ち主なのか、可能な限り明らかにしてほしい。そして、私たちの悲しい首都、東京にたまった膿を切開手術で取り除き、もっとまともな街にして、2020年の祭典を迎えたい。

 

≪参考記事&サイト≫

◎週刊文春9月1日号の記事「都議会のドン内田茂と4000億円五輪道路」

◎日刊ゲンダイ電子版「豊洲新市場『盛り土案潰し』真犯人は石原元都知事だった」(9月15日)

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/189920/2

◎東京新聞電子版「コンクリ箱案 石原氏が検討指示」(9月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016091690070606.html

 

≪写真説明とSource≫

◎豊洲新市場の「盛り土」問題で釈明する石原慎太郎氏(東京新聞電子版)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016091690070606.html

 


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